僕等の、赤。

 グサグサと言葉の矢が刺さって、ズキズキ痛む心臓に拳を当てて堪えていると、

「サバちゃん、俺が今から言うこと、そのまま喋って」

 蒼ちゃんが私の耳に口を近づけた。コソコソ話などしなくても、唐沢に蒼ちゃんの声は聞こえないのに。と思いつつも、傍にいてくれるのが嬉しかった。蒼ちゃんは、ちゃんと私の味方でいようとしてくれている。

 耳元で蒼ちゃんの言葉を聞き取り、

「録音してありますよ。唐沢さんの数々のモラハラ、訴えるに足りる量、録ってあります。十分すぎるくらい。モラハラの争点は相手が病んでいるかどうかではなく、モラハラの有無で判断されますから」

 言い間違えることなく発する。間違っているのは話の内容。ズボラな私は、唐沢との会話の録音などしていない。真っ赤な嘘だ。