僕等の、赤。

「ねぇ、まじで怖いんだけど。今、【蒼ちゃん】って言ったよね? 淋しすぎて死んだはずの岳海蒼丸の蒼汰が見えるようになっちゃったとか? ウケるわー。イヤ、ウケないわ。サブいわ。頭の中で死んだ蒼汰が架空恋人・ビューネくん化してるってことっしょ? まじ恐怖。しかもアイツ、夏川さんより一回りくらい下じゃなかったけ? キツイキツイ。更に【神様】とか言ってたよね? ホントにヤバイって、病院行きなよ」

 唐沢が、変な人を見る様な目で私を見た。

「…………」

 言いたいことは山ほどあるけど、唐沢とは月に1度顔を合わせなければいけない。逆にその月1をやり過ごせばあとは心穏やかに仕事が出来る。ここで言い返して更に険悪になって、ますます仕事がし辛くなるのは嫌だ。

 私は36歳。『こんな会社、辞めてやる』と言っても、次に働ける場所を見つけるのは至難の業だ。食わせてくれる男もいない。簡単に辞められないし、辞めたくない。私は、唐沢が嫌いなだけで、会社は好きなんだ。