僕等の、赤。

「ね、無理でしょ。これがお父さんって厳しくない?」

『分かったでしょ』と蒼ちゃんを諭すと、

「は? 何が?」

 唐沢が、所長のスケジューラーをクリックしながら私の方を見た。

 ……そうだった。蒼ちゃんが幽霊だということをすっかり忘れていた。というか、やっぱり蒼ちゃんは、私にしか見えていないのだろうか。

「別に、何も」

「独り言? 長年独り身だと独り言増えちゃうの? 可哀想に」

 唐沢が私を馬鹿にしながら『フッ』と息を漏らして笑った。

「……本当にコイツ、悪いヤツじゃないのかな?」

 唐沢のあんまりな態度に、蒼ちゃんが首を捻った。

「だから、蒼ちゃんが聞き間違えたか、神様が言い間違えたんだよ。どう考えても有り得ないじゃん‼」

 またもや蒼ちゃんに話し掛けてしまう。だって、私には蒼ちゃんが普通に見えるから。蒼ちゃんは、白装束も着てないし、頭に白い三角のヤツも付けてないから、幽霊な気がしない。