僕等の、赤。

「マルオが凡人? 才能がない? はぁ⁉ 何も知らないくせに。マルオが造る道具が美術さんの間でどれだけ評判だったか、分かりもしないで汚い言葉並べやがって。事務所も事務所だよ。なんでこんな酷いコメントをそのままにしておくんだよ。削除するか非表示にするかしてくれてもいいのに」

 握っていた拳でデスクを叩こうとした蒼ちゃんの手が、デスクをすり抜けた。

 物に当たることすら出来ない蒼ちゃんが、『クソ‼』っと自分の太腿を何度も叩いた。

「事務所の人、酷いコメント消してくれてるよ。消えてるコメントがあるの、私知ってるもん。追いつかないんだよ、次から次へと書かれちゃうから。コメント欄自体を非表示にしないのは、『マルオくん、無理しなくて大丈夫』とか『待ってるよ』っていう応援のコメントまでもが見えなくなってしまうからだと思う」

 マウスを動かし、ネガティブな言葉に埋もれるポジティブコメントを探し出し、蒼ちゃんに見せた。