僕等の、赤。

 「……よかった。いたよ、蒼ちゃん。私、妄想ババアじゃないわ」

 幽霊がいることに安心するのも、これはこれで危ない。

 「何? トイレに行ってる間に俺がいなくなったらどうしよう⁉ とか考えてたの? どんだけ俺のこと好きなのよ。ずっといるよ。転生しても一緒にいるよ」

 蒼ちゃんが、『淋しがり屋さんめ』と言いながら笑った。

 今起こっていることが全部現実なんだとしたら、蒼ちゃんの転生もそうなんだとしたら……。

 考えただけで、背筋がブルっと震えた。

 「……ねぇ、蒼ちゃん。私、本当に嫌だよ。唐沢だけは絶対に嫌だ。私、結婚も子どもももう諦めたの。結婚、してみたかったけど、もういいの。唐沢と結婚するくらいなら、ひとりでいたい。シナリオの代筆はするよ。でも、蒼ちゃんは産んであげられない。嫌いなんだよ、唐沢が。大嫌いなんだよ。……気持ち悪い」

 唐沢との情事が頭を過りかけ、吐き気が込み上げた。