僕等の、赤。

 「……ありがとうね、そんな風に思ってくれて。でも、考えてもみてよ。生きてるのは人間だけじゃない。数え切れない動物も【命】でしょう? その膨大な【命】と死者の【魂】を神様に『一手に担いなさいよ』っていうのは違くない?」

 蒼ちゃんがしょっぱい笑顔を作った。

 「優しいんだね、蒼ちゃんは。私はそんなに聞き分けよくなれないわ」

 今度こそトイレに向かおうとすると、

 「【蒼ちゃん】って呼んでくれるんだ?」

 蒼ちゃんが私の前に小走りでやって来た。まぁ、彼は幽霊なので、前を塞がれたところで突っ切れますが。

 「あ、ごめん。馴れ馴れしいですね。一視聴者のノリで【蒼ちゃん】呼びしてしまいました。なんて呼べばいいかな?」

 「【蒼ちゃん】でいいです。蒼ちゃんって呼ばれるの、好きだから。佐波野さんは【サバちゃん】でいい?」

 「【サバちゃん】て……」

 「だって佐波野ミソノって……」

 「そうだよ【鯖の味噌煮】からだよ。PN考えるのが面倒で、たまたま目に入った鯖の味噌煮缶から取ったんだよ」

 「やっぱりね」

 私の安易な命名に、蒼ちゃんが『そういうとこ、嫌いじゃない』と笑った。

 「【サバちゃん】、トイレ行ってきます」

 ダサいあだ名ではあるが、PNもダサいので、すんなり受け入れると、

 「いい加減行ってらっしゃい、サバちゃん♪」

 『やっぱり嫌いじゃないわ、サバちゃん』と蒼ちゃんが笑った。