僕等の、赤。

 「何してんの⁉ ばかなの⁉」

 地べたで『痛い痛い』と転げまわる36歳に、蒼ちゃんドン引き。

 「やっぱりか‼ 薄々そんな気はしてたけど、幽霊なんだな⁉ キミ‼」

 壁にぶつけた右肩を摩りながら、蒼ちゃんに最終確認。

 「最初からそう言ってるだろうが‼ まじでトイレに行けって‼ 膀胱炎になるそ‼ ゴメンだけど、俺幽霊だから、佐波野さんの手を引いて起こしてあげられないから、自力で立ち上がって」

 私に自分が幽霊であると信じてもらえたのが嬉しいのか、蒼ちゃんが楽しげに笑った。

 「……だめだ。立てない。起こして」

 世の36歳にそんなことをする人間などいないと思うが、万が一の為に忠告しておきたい。36歳はむやみに壁にタックルしてはいけない。痛みが尾を引いて動けなくなる。