偽蒼汰が私の掌に自分の手を伸ばした。……が、重ならない。

 「……つ、突き破られた⁉」

 蒼汰の手が、私の掌を貫通したのだ。摩訶不思議な体験に、目も口もかっ開く。

 「イヤイヤイヤ、痛くなかったでしょうが」

 「マジシャンだったんですね、アナタ‼ もう1回、いいですか⁉ さっきよりゆっくりめでハイタッチしましょう‼」

 手品といえば、新年会や忘年会で社員が酔っぱらいながら行う、はっきり言ってしまえば、クオリティーの低いものしか見たことがなかった為、あまりにも高精度の偽蒼汰の技に感動した。

 「~~~あぁー‼ どうしたら信じてもらえるんだよ‼ マジシャンじゃない‼ 岳海蒼丸の蒼汰だって言ってるじゃん‼」

 今度は毟る勢いで自分の髪を掻く偽蒼汰。