通夜が終わると、マルオはまた事務所の人に連れられて実家に帰って行った。

 ひとりで立っていられないほどには憔悴していない拓海と俺は、一緒にタクシーに乗って各々の実家へ帰る事に。

 2人共、しばらく無言で窓の外の景色見ていた。

 岳海蒼丸の、中・高時代の風景が蘇る。

 喉の奥がツンとするのは、懐かしさに切なくなったからなのか。これから作る思い出に蒼ちゃんがいない事への哀しみなのか。未だに判別出来ないほどに、心が現実を受け止めようとしていない。

 「……明日が蒼ちゃんに会える、最後の日……なんだよな」

 拓海が確認するようにポツリと零した。

 「……うん」

 蒼ちゃんの死をどうしても受け付けたくない俺たちは、心が現実に追いつかない。それなのに蒼ちゃんは明日、火葬される。