病院に着くと、救急外来の待合室の椅子に、上半身を倒して震えながら座るマルオが見えた。

 「マルオ‼」

 拓海と一緒にマルオに駆け寄る。

 ゆっくり頭を上げたマルオの顔は真っ青で、涙と鼻水でぐしゃぐしゃだった。

 「……蒼ちゃん……ダメだった。……蒼ちゃん、死んじゃった」

 震える唇で歯をカチカチさせながら、やっとの思いで吐き出したマルオの言葉が、全然飲み込めない。

 「……は?」

 『人が死ぬ』という事は勿論理解している。でも、『蒼ちゃんが死ぬ』というのは心が、頭が受け入れを拒否し、現実味がなさすぎてマルオのように泣けない。

 「……嘘だよ。何言ってんだよ、マルオ。俺は騙されないからな。蒼ちゃんの顔を見るまで信じない」

 拓海に至っては、血の気の引いた顔面で、変な笑顔を作っていた。