就職しておけば……。それは本心と言えば、本心。でも、『本心です』と言い切れるほどのものでもない。

 岳海蒼丸でいたかった。だから就職活動をしなかった。でも、社会の落ちこぼれになりたくもなかった。

 分かっている。社会を甘く見ていた自分が悪い。

 後悔というものは、前を向く事も上を見る事も困難にさせ、『どうしてあの時……』と戻れない過去を振り返らせる。後ろ向きで卑屈な俺は、

 「……ごめんね、がっくん」

 蒼ちゃんに謝らせてしまう。

 岳海蒼丸で活動しようと言ったのも、事務所に入ろうと言ったのも、東京に行こうと言ったもの、蒼ちゃん。

 蒼ちゃんは、俺の苛立ちを自分のせいだと思っているのだろう。

 違うのに。感謝しているのに。岳海蒼丸での楽しい時間は、蒼ちゃんのおかげなのに。