俺らにとって岳海蒼丸の活動は、盆と正月に必ず帰る実家的な感覚で、やるのが当然。ないと淋しい存在になっていた。

 大学を卒業しても、誰一人として『シェアハウスを出る』と言い出さないほどに、俺らの仲は相変わらず良かった。

 『誰だ⁉ 勝手に俺のプリン食ったのは‼』的なしょうもないケンカは多々あれど、これと言った大きなぶつかり合いもない、俺らの暮らし。

 さすがに30歳まで続くとは思わないけど、ずっとこんな楽しい生活が出来たらいいなと思う。

 「つか蒼ちゃん、9月で卒業する気でいるけど、出来んの?」

 拓海が一人だけ卒業出来なかった蒼ちゃんに絡む。

 「不吉なこと言うなよ」

 蒼ちゃんが、拓海に鼻息を荒げながら、グラスに酒を足して口の中に流し込んだ。