「てことで父ちゃんはひとりでご帰宅です」

 拓海が父親に向かってヒラヒラと掌をはためかせると、

 「お前はもう…。他人様の厄介にばかりなって。騒がしくするなよ。静かに静かーに大人しくしてるんだぞ。これ以上迷惑を掛けるような真似は許さんぞ」

 眉を八の字にした拓海のお父さんが、その掌に軽めのグーパンを喰らわせた。

 「拓海、ウチに泊めてもいいんですか? 連れ戻しに来たんじゃなかったんですか?」

 すっかり仲直りした様に見える拓海親子に蒼ちゃんが近づく。

 「私が拓海を大学に行かせたいのはね、将来の安心の為もそうだけど、こんな風に仲間と楽しい時間を少しでも長く楽しんで欲しいからなんだ。社会人になると、なかなか難しくなってしまうから」

 拓海のお父さんは、蒼ちゃんに笑顔で頷くと、『拓海がうるさくしたらガムテで口塞いでいいからね』とマルオと俺に笑いかけ、『拓海がご厄介になります。よろしくお願いします』と蒼ちゃんの両親に頭を下げると、ひとりで家に帰って行った。