「…進学は、今じゃなくても出来ますよね? 何歳からでも出来ますよね? 夢に向かって頑張ってみてから考えても良いのではないでしょうか? 通信教育で勉強するっていう手もあるかと…」

 拓海と拓海のお父さんが納得できる妥協点はないかと、4人の中で1番頭の悪い俺も、何かないかと案を絞り出してぶつけてみる。

 「そうだね。齢を取ってから学校に通ったりする人も確かにいるよね。そういう人は本当に素晴らしいと思うよ。でも、そんな人間は限りなく少ない。何でか分かる? 若ければね、周りと同じ環境に流されて勉強が出来てしまうんだよ。でもね、齢を重ねてしまうとね、『今更…』って躊躇してしまう人間がほとんどなんだよ。若者の中に入って行くにも勇気が必要だったりね。それに、大人になれば環境だって変わる。若い時ほど自由に使える時間が圧倒的に少なくなる。勉強する時間を確保する事が難しくなる。勉強に打ち込んでいる大人はね、若い学生に比べて勉強に対する熱意と意識が高いんだ。拓海が大人になった時、そんな意識が持てると思う? 君たちなら持てる? 勉強は若いうちにした方が、間違いなく負担が軽い」

 拓海のお父さんの言っている事に納得出来ない部分は1つもなく、拓海のお父さんが拓海を想って話している事が分かり過ぎるほどに理解出来てしまうから、言い返す言葉などあるはずもなく、拓海を庇う事も出来ない。俺もまた、口を閉ざしてしまうと、

 「…拓海も、僕たちと一緒に大学に行きます」

 蒼ちゃんが拓海の気持ちを無視して、拓海のお父さんに折れてしまった。