「え⁉ 何で⁉ 誰か俺ん家に電話した⁉」

 拓海が蒼ちゃんとマルオと俺の顔を見渡す。

 『してないしてない‼』

 3人共首を左右に振って否定。

 「…と、言う事は…」

 蒼ちゃんが眉を顰めながら、部屋のドアを開いた。

 「姉ちゃんが拓海の家に電話したの?」

 「うん。拓海くんのご家族が心配してるだろうなと思って」

 蒼ちゃんの問いかけに、『良い事しました』的な満面の笑みを浮かべながら答える花さん。

 「…そっか」

 『ふぅ』と小さな溜息を吐いた蒼ちゃんが、『ゴメン』と両手を擦り合わせながら振り向いた。

 事情を知らない花さんを責めるわけにもいかない俺らは、『いいよいいよ』と苦笑いするしかない。

 「…とりあえず、リビングに戻ろうか」

 『結局何も解決してないけど』と、蒼ちゃんが中央に押し寄せる眉毛のせいで、激しく波打つ眉間を摩った。

 「…行きたくねー」

 頭を掻き毟りながらしぶしぶ立ち上がる拓海を、

 「大丈夫大丈夫」「今度はキレずに話し合おうな」

 とマルオと俺とで宥めながら、4人で蒼ちゃんの部屋を出た。