「え? 蒼ちゃん、知らなかったの?」

 マルオが、驚く蒼ちゃんに驚いていた。

 「普通、一番最初に所属タレント確認しない?」

 俺も蒼ちゃんにツッコむ。

 「えぇー。見なくね? 事業内容とか提携会社とかしか目通ししてないわ」

 表に出るのが嫌いなわけではないとは思うが、どっちかというと裏方志望の蒼ちゃんは、どんな有名人が所属しているかなど興味ないらしい。

 「やっぱ、変わってるわ。蒼ちゃんは」

 目の付け所の違う蒼ちゃんに感心する俺に、

 「流石だよね」

 マルオがコクコクと首を縦に振った。

 「変人扱いすんな。つか、今日家族に話したら結果教えてね。てことで、もうそろそろ昼休みが終わるから一旦解散‼」

 蒼ちゃんを笑うマルオと俺の頭を軽く叩くと、『次、移動教室だった』と言いながら蒼ちゃんがスクっと立ち上がった。

 「昼休み、短すぎるだろ」

 しかし、授業など受けたくない勉強嫌いの俺の腰は重い。

 「はい、行きますよ」「さっさと立て」

 そんな俺の両腕を、マルオと蒼ちゃんが持ち上げ、無理矢理立たせられ、引きずられ、歩かされた。

 こんな平々凡々な俺らが、芸能事務所に所属…。全く想像が出来ない。