「拓海は俺の下心を見抜いたから怒ったのかも」

 『何気に鋭いからな、拓海は』と蒼ちゃんが自分の頭をクシャっと掻いた。

 「ん?」「下心?」

 素直なマルオと能天気な俺は、蒼ちゃんの言う『下心』が何なのか分からず、顔を見合わせた。

 「俺さっき、『拓海の事を想って風』に話したけど、本当は全部自分の為。俺、自分が作った話を形にしたくてみんなを巻き込んでさ、事務所にまで一緒に入ろうとしてるわけじゃん。何かあったところで3人が俺を責めるような人間じゃない事は分かってるけど、それでもどうしたって責任を感じるじゃん。それを回避したいっていう俺の気持ちを、拓海は察したんだと思う」

 『意地汚いとは思うけど、それでもやっぱ嫌なんだ。俺が手を貸してどうにかなる範囲ならいいけど、俺の力なんかたかが知れてるし』と蒼ちゃんが、さっきまで拓海が座っていた場所に視線を落とした。