「でも蒼ちゃん。時間は無限じゃないんだよ。チャンスだって何度も巡っては来ないん
だよ。今しかないと思うんだよ」

 「……」

 拓海の切なる想いに、蒼ちゃんは言葉を消した。

 「事務所との打合せ、いつなの?」

 進学どころか高校さえ中退してしまいそうな勢いの拓海が、『早く会いに行こう』と蒼ちゃんを急かす。
 
 「まだ決まってないよ。今日DM貰ったばっかだし。つか、俺ら17だよ。保護者の同意が絶対条件。拓海、親を説得出来るの?」

 蒼ちゃんは、夢に突っ走ろうとしている拓海を心配そうに見つめた。
 
 「出来るよ。てか、するよ。俺の人生だよ。誰にも邪魔させない」

 さっさと家に帰って家族に話したい様子の拓海が、鼻息を荒げた。

 「助言とか提案って、【邪魔】なの?」

 蒼ちゃんが寂しげな表情を見せた。