キミになりたい。

瀬戸は意地悪な目で私を見つめてくる。

「昨日はありがとう」

素直にそう言うと、瀬戸は鞄をしまって席に座る。

「慧と約束したの。マラソン大会でお互い1位を取ろうって。だから、練習しなくちゃで」

聞かれてもないのに必死で言い訳をする。

瀬戸はへえー、と興味無さそうに返した。


「お前すげえ顔してたぞ」

「え?」

「昨日走ってるとき。最初豚でも突進してるのかと思った」

耳から顔が赤くなるのを感じる。

「うるさい」

私は瀬戸を睨みつけた。

やっぱり瀬戸は意地悪な笑みを浮かべていた。

彼はよくこの表情をする。

「瀬戸だってさ。昨日咲良ちゃんと一緒にいたけど。いいの?朱里ちゃん」

「別にあいつらとはそういうのじゃねーから」

瀬戸は急に機嫌を損ねたように視線を逸らして言った。

変なやつ。