お昼休みになって、
周りが賑やかになった頃、
陸はふらっと教室を出た。


「若葉~。早くお昼一緒に食べよ~」


亜紀がお弁当箱を私の机に置いた。


私は廊下を歩く陸を目の端で捉えてから、
亜紀に向かって手を合わせた。


「ごめん。ちょっと用事!」


「えー?ちょっと……若葉っ!?」


教室を出て走り出す。
すると屋上への階段を上る陸の姿を見つけた。


急いで後を追いかけると、
陸は扉に手をかけていた。


「陸っ!」


私の呼びかけに反応した陸は
ドアから手を離して私を見た。


「ああ、二宮か」


「陸、話があるの」


「なんだよ」


「陸はさ、私のこと、覚えてないの?」


私がそう言うと、陸は怪訝そうに私を見つめて、
また更に深いため息をついた。


「覚えるも何も、今日初めて会っただろ」


「嘘。幼馴染でしょ?」


「あのさあ、知らないって言ってんじゃん」


何?何なの?
私を避けてるつもり?
覚えてないってどういうこと……?


頭の中でぐるぐる考えていると、
陸が口を開いた。


「……もしかして、どこかで会ったのか……」


「どこかって、あんなに毎日一緒にいたのに……」


私の言葉に、陸は眉をひそめて再び口を開いた。


「俺……記憶が抜けてんだよ」


「えっ……?」













“記憶”がない……?