唖然とした。


顔は似ている。
名前も同じ。
だけど苗字が違う。


そこに立っていたのは
かつて幼馴染だった高木陸だった。


でもどうして?
別人のように感じるのは何故?


「えっと、席は~二宮の隣だ。
 あそこにいるだろ、ちっこいやつ」


「ちっこいって言うな……」


倉ちゃんに向かってそう呟くと、
陸はゆっくりと私の席まで歩いてきた。


窓際の一番端が私の席。


陸は席に着くと私を一瞥して、
それから前を向いた。


「なに?結構イケメンじゃん」


「当たりだね!彼女とかいるのかなぁ」


「私、タイプかも」


女子たちが騒ぎ立てる中、
私はふっと陸のほうを向いて口を開いた。


「陸……だよね?」


陸は私をもう一度見た。
じっと見つめられると、やっぱり陸なんだって思う。


けれど陸の口から出たのは
予想もしていない言葉だった。


「誰だ……?」


「えっ……?」





“誰だ”ってなにさ。
久しぶりに会ったからってツンとしないでよね。


「何ふざけてんの。ねえ、陸でしょ?
 高木陸。若葉だよ。覚えてない?」


「……知らないな」


「陸……」


「誰と間違えてるのか知らないけど、
 俺、“佐々木”陸だから」


「佐々木……?」


陸はため息をついてまた前を向き始めた。


やっぱり人違いなのかな。


たまたま名前が同じなそっくりさんなのかも……。


私はそれ以上何も言わずに、
ただ黙々と倉ちゃんの話に耳を傾けた。