私のために争わないで!
って、こういう状況のことを言うのかな。
とにかく2人のやりとりを見て、ちょっぴり嬉しくなった。
今まで誰かに好きだと言われたことなんかないから、
余計嬉しい。
それがどんな人だったとしても。
「ちょっと、二人とも止めなよ」
私がそう言うと、
歩夢がニコニコしながら私を見た。
「絶対落してみせる。じゃあまたな」
歩夢はそう言い残して教室を出た。
ほっとするような寂しいような、そんな気がした。
「若葉、俺も教室戻るわ」
「あ、うん」
行っちゃうの?もっと一緒にいたいのに……。
「待って」
「ん?」
「私も一緒に行く」
私の言葉に、陸は小さく笑うと
「おいで」と手を差し伸べた。
その手を取ると、大きな手に包まれた私の手が
いかに小さいのかがわかる。
後ろを振り返ると、由紀乃が
ニヤニヤして私に手を振っていた。
「お幸せに~」
由紀乃が小声でそう言う。
私は恥ずかしくなって陸の手を引いて教室を出た。