びっくりして見上げる私。
それは由紀乃も陸も同じだった。


「それ、俺の席」


歩夢が不機嫌そうに陸を見てそう言った。


陸が「ごめんな」って謝ると、
歩夢は軽い舌打ちをした。


「お前、誰だ?二宮若葉とどういう関係?」


「……お前に言う必要、ある?」


「あるね。だって俺、二宮若葉が好きだし」


「は、はあ!?」


歩夢の言葉に唖然とする2人と、私。


何?今日会ったばかりで好き!?


馬鹿言わないでよ。
そんなのドラマや漫画でよく見るけど、
現実でそんなことあり得ないでしょ。


たとえそうだとしても、絶対良いことない。


歩夢は陸を睨みつけて、ふん、と鼻を鳴らした。


「こいつなんかより俺のほうが断然かっこいいね」


それ、普通自分で言うか?


陸もまた、歩夢の方を見て口を開いた。


「確かにそうかもな。でも残念。若葉は俺の彼女だから」


冷静な言葉に歩夢も一瞬言葉を失った。


けれど再び嘲笑うかのように陸を一瞥した。


「油断してると、危ないぞ。
 いいか?俺は惚れた女がいたら
 どんなことをしてでも自分のものにしてみせる。
 たとえ彼氏がいたとしてもな」


数時間前の自分に訂正。


確かに歩夢は悪い人じゃないけれど、精神年齢が幼い。


「若葉が好きなのは俺だ。お前じゃない」


陸がついに反論した。