「海?」


冬休みに入り、いつものように
勉強を見てもらっていた時だった。


いきなり陸が海に行きたいと言った。


「そ。寒いの苦手か?」


「いや、平気だけど」


「じゃあ、気分転換に行ってみようぜ。
 散歩がてら」


「うん」








外に出ると、雪が降っていた。


陸が寒そうに腕をさするもんだから
思わず笑ってしまう。


そういえば、
小さい頃も同じようにしていたっけ。


寒さの中走り回る私と、
それを震えながら眺める陸。


一緒に作ったかまくらや雪だるまが懐かしい。


「ん」


「えっ?」


「手。寒いから」


陸は私の手を取ると
自分のポケットの中に入れた。


左手だけが、とても暖かくてほっこりする。


こういうことを自然とするから、油断ならない。


ドキドキするこの気持ちは何?


もしかして……。






(恋……?)







ダメよ。好きになってはダメ。
陸は幼馴染。


今、付き合っているのだって
私の“嘘”なんだから。


好きになってしまったら、
いつか罰が当たりそうで怖い。


けれど私は陸の一挙一動に
胸が高鳴るのを抑えきれずにいた。


「着いたぞ」


海が見えた。真っ白い海が。


季節外れの海には誰の姿もなく、
静けさが漂っていた。