「資料って……ねぇ?」
1組の委員・大谷由紀子に言われ世莉も苦笑いする。ちなみに世莉は2組だ。あと、3年と1年がいるのだけど……。
「悪いけど、私たち塾があるから。1,2年で適当にやっといて。どうせ誰も見ないんだから」
こんなわけで1年と2年の1、2組の図書委員4人が顔を見合わせてため息をつくことになった。
「面倒だから、早めに適当に済ませちゃう?」
由紀子の声に、残りの3人もしぶしぶ首を縦に振り立ち上がる。勿論向かうのは図書室だ。
「うちの学校ってそんな歴史あるんですかね?」
一年生の子にそう聞かれても世莉は「さあ、どうなんだろ」としか答えられない。創立何年すらも知らないのだから。
「あ、ここですね」
もう一人の一年生の声に3人は駆け寄った。そこには、この高校歴代の卒業アルバムがあった。
「これ見たら、昔の校舎とか制服がわかりますよね?」
「うんうん、いつ建て替えたとかもあるだろうし?」
「こんなもんでいいですよね?」
「いい、いい! 3年も『適当に』って言ってくれたしね?」
こんな会話をして、4人はにんまり笑って古いアルバムに手を伸ばした。
「うわっ、古っ」
「ザ.昭和って感じだよね?」
そんなことを話しながら古いアルバムをめくっていくのだけど――。
「あれ? 昭和30年で終わってますよ? うちの創立ってここなんですか?」
「違うでしょ? もっと古いはずだよ。ほら、まだそこにある旧校舎すらここには載ってないじゃん」
由紀子が指さす場所には古びた木造校舎があるだけで、窓から見える取り壊し寸前の旧校舎の姿はない。
「えー、ならこれより古いのって……」
1年生の声に3人が見たのは旧校舎だ。
「確か、向こうにも図書室ってまだ残ってるって誰か言ってたよね?」
世莉の言葉に隣で由紀子がこくんと頷く。
「必要なものだけこっちに持ってきて、古くて要らないものはそのままだって……」
誰もが聞いたことある話に、4人は仲良くため息をついた。
「まぁ、嫌なことは済ませちゃおうか?」
そして、この由紀子の提案にも全員が頷いて、旧校舎に向かうことにした。