そう心で呟くと、光は淡くなり猫たちの輪郭もふわりとぼやけていく。そして神威がカーテンを開けると、傾いた太陽の光が彼らを照らして――。
「……消えた?」
 一瞬で彼らの姿は世莉の目の前から消えてしまった。
「昇華したんだよ」
「昇華……、そっか、そうなんだ……、えへへ……」
 何となく笑いたくて、でもまだ涙もこぼれている状態で、よくわからないけれどそれでもいいやと笑えば、「ったく」と呆れるような声が落ちてきた。
「ほら」
 その声とともに目の前に差し出されたのは一枚のハンカチだ。
「……」
「要らないなら引っ込めるけど?」
「あ、ありがとうございまっ、 ひゃあっ!」
 変な言葉になったのは、そのハンカチを受け取ろうとした瞬間、また大きな静電気が起きたから。その現象に彼は険しい顔を見せた。
「……お前、何持ってんの?」
「え? 持って? いえ、何にも――、あ」
 思い当たるのはひとつだけ。そう思って世莉はポケットから鈴を取り出した。勿論取り出してもこの鈴は鳴らない。
「それ――、っ!」
 世莉が手にした鈴に彼が手を伸ばすと、やはり静電気が起きて世莉は「え?」と首を傾げた。
「ちっ、俺を拒むなんて」
「はい?」
 意味がわからず聞き返す世莉だけど、彼は「まぁいい」とその手を引っ込めた。
「いずれそれ、貰いに行くけど、穢れないようにちゃんと無くさず持ってろよ?」
「は? なんか全然意味が分からないんですけど!?」
「別に理解しなくていい」
「な、何勝手に完結してるんですか!」
「それより、下で待ってるお友達の記憶消していいか?」
「はい!? そんなこと出来るんですか!? って、そう言えば一緒にここに来た男の人は?」
 世莉の発言に神威は「あぁ、見えたのか」なんて言うから、彼女も察してしまった。そう、きっとあの彼はほかの人には見えなかったのだ。言われてみればここに来る際も、みんな神威のことしか言っていないことに気が付いて、世莉は脱力した。
「あれは――」