最後に、イチかバチか、同じ俳優の親友を頼ろうと思った。
「ハァハァ・・・・・・」
走って親友の家へ向かった。
〝ピンポ~ン〟
(身体はないけど、触れる事は出来るんだな)
「は~い」
ドアが開いた。
〝ギィ~〟
「おう!!恭時!!!どうしたんだよ!!!」
「良かった!!!」
「え?」
「盾哉、俺が見えてるんだな!!」
「え!?何だよ!!(笑)何ワケわかんねぇ事言ってんだよ!!!」
「ちゃんと、俺の声も聞こえてるんだ!!!良かった!!!
コレは奇跡だ!!!」
「いや!!お前、おかしいぞ!!!どうしたんだよ!?」
「いや、俺、実は、死んじまったんだよ!!!」
「は!?」
そう、彼は、雨澤の親友で、同じ俳優である親友、
「阪部盾哉さかべじゅんや」だ。
「ん~、お前の話は、どうも信じられんな。そもそも、
昨日会った時だって、元気にしてたじゃねぇか」
「俺だって、信じられないんだよ。何で突然、死んだのかも分からないし」
「う~ん・・・・・・」
「分かった。じゃあ、俺が証拠を見せるよ。そうだな~。
鏡、あるか?」
「ん?あぁ」
雨澤は、鏡の前に立った。
「アレ?お前、ここに立ってるはずなのに、鏡に映ってない!?」
「あぁ、コレが証拠だよ。一応、他にも何か証拠を見せようか?」
「あぁ。でも、今度は、どんな証拠だ?」
「外に出よう」
「あの~。あの~」
雨澤は、色々な人に声をかけたが、皆、全く反応しない。
「アレ?皆、お前に全く気づいてない!?」
「そうだよ。皆、俺の姿が見えないし、声も聞こえないんだ」
「マジかよ!!!」
「どうだ?これで信じてくれたか?」
「あぁ・・・けど、どうして、他の人達に見えないお前が
俺には見えるんだ?」
「さぁ?それも、分からない」
「ん~・・・それに、俺は、今まで幽霊なんて、見た事が
ないんだ。なのに、何で?」
「いや、幽霊だって、人間の姿をしてるんだ。どれが生きた人間でどれが幽霊かなんて、今みたいに確かめないと
分かんないモンさ」
「そうか。確かにそう言われてみればそうかもな。じゃあ、俺は、霊感を持ってて、これまでにも色んな幽霊を見た事があって、それが全部、〝幽霊だと知らないでいた〟って事か?」
「多分な。俺も、良く分からないけど」
「でも、これからどうする?」
「う~ん・・・・・・」
「あ!そうだ!!」
「ん?」
「俺が代わりに事情を説明するから、とりあえず、ドラマのスタッフさん達のところへ行こう!!」
「あ、うん」
雨澤と阪部は、ドラマのスタッフ達のところへ行った。
「ハァハァ・・・・・・」
「ん?どうしたんだ?」とドラマスタッフが言う。
「あの、多分、見えないと思いますけど、ここに雨澤が
いるんです!!!」
「は!?何、馬鹿な事を言ってんだよ!!!」
「俺も、最初は信じられませんでした!!!」
「おいおい・・・そりゃ、一体、どういう事だよ?」
「実は、雨澤は、死んでしまったらしいんですよ!!!」
「え!?いや、雨澤君は、昨日も、元気だったじゃないか!!!それが何で急に!?」
「いや、コイツの話によると、昨日、帰って、朝起きたら、
いつの間にか死んでいて、幽霊になってしまっていたそうなんですよ。ですが、俺にだけは、コイツの姿も見えたし、声も聞こえて」
「って事は、今、そこにいるっていう彼は、幽霊なのか?」
「そうです!!!」
「ん~・・・そう言われても、信じられないね~・・・・・・昨日まで元気だった雨澤君が突然死んで、幽霊としてそこに立っているなんて・・・・・・」
すると・・・・・・
「ア・・・アレ・・・・・・!?」とカメラを調整していたカメラマンが言った。
「ん?どうした?」
「ここに雨澤君と思わしき人の姿が映ってます!!!」
「何だって!?」
「え!?」と、驚いた雨澤が言った。
カメラマンは、録画したその数秒の映像を再生し、阪部や
他のスタッフ達に見せた。
「アレ!?本当だ!!!それに、声まで入ってる!!!」
「阪部君、本当に雨澤君は、死んだのか!?」
「はい」
「そうか。念のため、もう一度撮ってみよう。雨澤君、
そこにいるなら、カメラを意識しながら適当に動いたり喋ったりしてみてくれ」
「はい」と、カメラマンに声は届かないが、雨澤はそう答えた。
「本当だ!!!やっぱり撮れてる!!!姿も声も、生きてる人間と全く同じように入ってる!!!」
「でも、何でカメラには雨澤の姿も声も入るんでしょうね」と、阪部が言った。
「さぁ?それは分からないけど、今、こうして、我々の眼には見えない雨澤君がカメラには映っていて、声も入っているという事は、〝雨澤君が死んで幽霊になった〟というのは、
本当のようだね」
「はい」と阪部が答えた。
「とても残念だよ・・・・・・」
「あ!!!」
「どうしたんですか?」と阪部が聞いた。
「でも、こうやって、雨澤君の姿も声も、カメラに収められるなら、雨澤君は、俳優を続けられるんじゃないのか!?」
「え!?」
「まぁ、共演者達は、姿も見えない、声も聞こえない雨澤君と演技をするのは大変だけど、色々工夫すれば・・・・・・」
「分かりました!!!やります!!!」と雨澤が答えた。
「え!?」と、阪部が驚いた。
「どうした?阪部君」とプロデューサーが聞く。
「コイツ、今、〝やります〟って言いました」と阪部が答える。
「そうなのか」
「はい」
「でも、お願いしたい事が1つだけあります」と、雨澤が言った。
「あの、コイツ、今、〝お願いしたい事が1つだけあります〟と言いました」と阪部がスタッフ達に言った。
「え?」
「僕が死んだ事を世間には公表しないでください」と雨澤が言う。
その事をまた阪部が雨澤の代わりにスタッフ達に伝える。
「コイツ、ファンの人達に自分が死んだ事を言わないで欲しいみたいです」
「そうなのか!?」