私の幻想はホントにあった

それから、ミリカとゼドルは、色んなところへ一緒に行った。

ある時は、ガードマンの仲間達も一緒に祭りに行ったりもした。





〝ヒュ~ン〟〝バン〟





花火が打ちあがる。

ゼドル以外のガードマン達は皆、食べ物を買ったり、遊んだりなどしている。





「わ~!!キレ~イ!!」

「だろ!?ミリカも、花火、好きかい?」

「うん!!キレイだから!!私の世界でも、毎年、夏祭りで良くやってて、私、いつも、浴衣を着て夏祭りに行ったりしてたの!!」

「〝浴衣〟?」

「あ~・・・ここはヨーロッパみたいな国だから、そういうのはないか・・・」

「ヨーロッパ?」

「うん!!〝ヨーロッパ〟っていうのは、私がいた世界にあって、〝イギリス〟とか〝フランス〟とか〝イタリア〟とか色んな国があるんだけど、〝ヨーロッパ〟は、この国に良く似てるの!!で、私は、〝アジア〟の〝日本〟に住んでたの。でも、私は、お父さんが日本人で、お母さんがイギリス人のハーフなの」

「へ~!!そっちの世界にも、たくさんの国があるんだね!!」

「うん!!」





〝ヒュ~ン〟〝バン〟





周りには、犬、猫、ハトなどの動物達がいる。





「アレ?皆、何か言ってる!!」

「本当か!!また動物達は喋ってるのか!!」

「うん。え~っとね」





その日も、ミリカは、動物の言葉を聞いて、なんと言っているのかをゼドルに教えていた。





しばらくして、花火も祭りも終わった。
それからも、ゼドルと共に色んなところへ行く度に、ミリカは、

色んな動物の言葉を聞き取った。たくさん人が通るところでも

動物達がなんと言っているかをゼドルに教えていたため、

周りの色んな人達が影からそれを見る事で、

「ミリカが動物の言葉が解る」という事が噂になり、時には、

「この動物、なんて言ってるんですか?」などという質問をされる事もあった。





だが、ミリカの能力の事が色んなところで話題になると、影で悪巧みをする人間達が「アイツは色んな事に使えて金儲けができるんじゃないか?」などと言っていた。





その日の夜、ミリカは、

(そういえば、今頃、現実の皆はどうしてるんだろう?)7と考えながら寝た。
数週間後、ミリカは、いつものように「MaGistic Security Guard」のメンバー達といた。だが、そこへ、銃を持った男達が何十人もやって来た。





〝バン〟





「何だ?」

「おい!ここに、動物の言葉が解る娘がいるだろ?」

「何でそれを!?それに、何でここが分かった?」

「その娘の事は有名だよ。何でここが分かったかなんて簡単だ。

その娘は、大体、ここのリーダーであるお前と一緒にいるんだからな」

「くっ!!この娘に何の用がある!?」

「ソイツのその能力を使えば、良い金儲けになると思ってな~!!だから、さぁ、大人しくソイツを渡せ。そうすりゃ、何もしねぇでやる」

「この娘は、道具じゃない!!」





〝バン〟





「クソッ!!仕方ない!!皆、戦うぞ!!」

「了解!!」





ギーゼフ以外のメンバー達は、ガムを噛んだ。





「えっ!!こんな状況でガム!?」

「あ~、そうしないと、戦えないんだよ」

「えっ!?どういう事!?」

「詳しい話は後だ!!」





皆、ガムを膨らまし、そして、弾け、消えた。





「あっ!!コレ、あの時も同じだった!!」





その時、ミリカは、ゼドルと出会った時の事を思い出していた。





「おい!!大人しくしてるヒマなんかねぇぞ!!俺達は、のんびり待ってやるほど気が長くねぇんだ!!」





〝バンバン〟





「ンなこたぁ、言われなくても分かってるよ!!」

ゼドルは、銃弾を止め、ひっくり返らせて飛ばした。





〝バババババン〟





〝グシュアッ〟





銃弾は、男達の手や腹などに当たり、男達はケガをした。





「うわ~~~っ!!!」





ミリカは、

(コレは、あの時と同じ魔法だ!!)と思った。





「仕方ない。今は、手加減してる余裕なんてない。お前ら、あとは

何とかしといてくれ!!俺は、ミリカを連れて逃げる!!」

「了解!!」
ゼドルは、ミリカの手を引っ張って走った。

大変な状況だったが、ミリカは、ゼドルにまた手を握られ、守られながら、ドキドキしていた。

敵は、思ったより大勢いて、走った先にも何人も待ち構えていた。





「クソ~!!コイツら、一体何なんだよ~!!」





ゼドルは、一旦ミリカから手を離し、迫り来る敵を剣でひたすら斬りまくった。





〝ザンッ〟〝シュッ〟〝ズシャッ〟





(わ~!やっぱり、カッコ良い~!!)と思った。再びゼドルに引っ張られて走り、少し前、ゼドルと一緒に行った図書館に入った。





〝バタン〟
「ハァハァ・・・・・・ここまでは、さすがに追って来ないだろ」

「え?何で?」

「この図書館には、色々と大切に管理されてる、とても貴重な本が多いからね。中も外も、警備が厳重なんだよ」

「あ!確かに、そう言われてみれば、この前もさっきも、ここでいっぱい警備員さんを見た!!」

「だろ?だから、ここなら大丈夫さ」

「そっか!!」





「でもさ、ゼドルの仲間の人達、大丈夫かな?」

「大丈夫だよ!!俺の仲間達は、皆、強い!!超優秀な仲間達さ!!あんなヤツらにやられはしない!!」

「そっか!!あの人達も、カッコ良かったな~!!」

「ん?」





ミリカは顔を赤くした。





「あ!あ~!!実は、前から、ゼドルが戦ってるところを見ると、

とっても勇気があるし、カッコ良いな!!って思ってたの・・・・・・でも、さっき、ゼドルの仲間のあの人達が戦ってるところを見て、

あの人達も、凄くカッコ良いって思った!!」





すると、ゼドルも顔を赤くした。





「え!?ホントに!?ありがとう・・・・・・」





ミリカは、その時、そんなゼドルを見て、普段はカッコ良いゼドルも、テレると可愛い一面があるんだと思った。





「でも、俺の仲間達も、頼もしいだろ!?」

「うん!!あ・・・!そういえば、さっき、大変な状況だったのに、ガムを噛んでたけど、何で?」

「あ・・・あ~。アレは、魔法使いが魔法を使う時に必要なのさ。

魔力が入ったガム。アレを噛む事で、身体に魔力を取り入れる事が

出来るんだよ。1枚噛めば、1時間魔法が使える」

「そうなんだ!!あ!それと、何で、あのガムは、突然消えたの!?」

「あ~、あのガムは風船ガムなんだけど、ちょっと特殊でね。普通、ガムは、噛んだ後、袋に包んで捨てるモンだけど、魔法を使って戦う時、そばにゴミ箱なんてない事が多いし、捨ててるヒマもないから、捨てなくて済むように、膨らませて弾けると、その弾けた瞬間に消えるように作られてるのさ」





「へ~!そうなんだ!!凄いね!!便利!!」

「だろ~!?まぁ、ガムを噛んだ後、ゴミ箱がそばにないからといって、ポイ捨てするワケにはいかないし、かといって、ポケットに入れるのも汚いからね」

「なるほど!凄い!!ガムで魔法が使えて、しかも、膨らませて弾けた瞬間消えるなんてオシャレ!!私が好きなどのファンタジーにも、そんなの全然なかった!!」

「ファンタジー・・・・・・?何それ?」

「あ~、私達の世界の文化。〝ファンタジー〟っていうのは、

〝夢のような物語〟の事。私達の世界では、魔法は使えないんだけど、私達の世界にある〝ファンタジー〟ってジャンルの物語には、魔法を使える人が出てくるの。ファンタジーの世界でも、魔法にも

欠点や使うための条件や制限があって、作品によって、皆、魔法を使うための条件は違うんだけど、〝ガムを噛んで魔法を使う〟なんて、見た事ないし、弾けて消えた時、凄くビックリした!!」

「あ~、そうなのか」





「うん!!まぁ、私が今まで見てきたのは、全部作り話だったんだけどね」

「そっか!そうやって、君はずっと、魔法に憧れてきたから、

初めて会った時も、魔法を見て嬉しそうにあんな事を言ってたのか!!」

「あ・・・あ~・・・・・・」





その時、ミリカは、異世界へやって来て、初めてゼドルに会った時の、自分の「私の幻想はホントにあったんだ!!」という発言の事

を思い出した。





「あの言葉、聞こえちゃってたのか・・・恥ずかしい・・・・・・」
「なぁ、ミリカ、今まで、その〝作り話〟の中でしか見なかった魔法を、実際に目の前で見てどうだった?」

「え!?そりゃ~、凄かったし、迫力あったし、感動したよ!!テロリストに人が襲われたり、私も、色んな人に狙われたり、大変だったけど」

「そうか・・・・・・でも、魔法がある事は、良い事ばっかりじゃないんだけどね」

「え!?そうなの!?何で!?」

「そのうち分かるさ」

「そっか・・・・・・」





「それと、ミリカ、今日、ミリカを自分の都合の良いように使おうと考えてるヤツらに狙われて大変だったけど、おそらく、今日、襲いかかって来たヤツらは、まだ、懲りないだろうし、今日のヤツら以外にも、まだまだ襲ってくるヤツがいるかもしれないよ」

「え!?私、まだ襲われるの!?それに、他にもまだまだ襲ってくる人達がいるかもしれないって!?」

「うん。分からないけど。自分の利益のために他人を襲うような悪いヤツらは、そう簡単には懲りないし、ミリカが動物の言葉を理解する力を持ってるのは、もう、かなり有名みたいだからね」

「そんな・・・・・・?」





ミリカは、泣いた。
「大丈夫だよ。俺が、いや、俺達が守ってやる」

「え!?〝俺達〟って?」

「な~んだ!!もう忘れちまったのか!?俺の〝MaGistic Security Guard〟の仲間だよ!!」

「え!?でも、私、お金、ちょっとしか持ってないんだよ。それに、今日は、突然、私が皆の目の前で襲われたから、助けてくれたけど、

これから毎日守ってもらって良いの?」

「大丈夫だよ!!何とかするから!!俺に任せろ!!」

「ありがとう!!」

「礼なんて良いさ!!俺も、普段は商売でやってるけど、目の前のピンチな人がお金を持ってなくても、ほっとくワケにはいかないから!!」

「なんて頼もしくて優しいの・・・・・・!!!」





その時、ミリカは確信した。ゼドルは、美男子である事や強い事である以上に、何より、この、優しさや懐の広さがカッコ良いと。そして、ゼドルは、とても魅力的な少年だという事を、改めて実感した。





「ごめん、ミリカ、今、うかつに外に出ると危ないから、今日は、ここでイスに座って寝よう。こんなところで寝る事になって悪い」

「ううん。良いよ。今、夏だから、毛布がなくても寒くないし」

「そっか。本当にごめんね。じゃあ、おやすみ」

「うん。おやすみなさい」





そうして、2人は、図書館でイスに座って寝た。





翌朝・・・・・・
「おはよう。ミリカ」

「おはよう。ゼドル」

「もう、さすがに、昨日のヤツらは一度帰って、今、外は一旦、安全になってるだろう。じゃあ、これから、また皆に会いに行こうか」

「うん!!」





2人は、「MaGistic Security Guard」に戻った。

戻ってみると、ゼドルが言っていた通り、皆は無事だった。





「皆!おはよう!昨日は大変だったな!!すまなかった!!」と

ゼドルが言う。

すると、ギーゼフが

「いや~、ホントだよ!!いきなりあんなに刺客が来て、ビビったぜ!!でも、昨日、俺達が戦ったヤツらは通報して、逮捕されたよ」

と言った。

「そっか。それは良かった。でも、急にあんなにたくさんのヤツらと戦わせてすまなかった」

「まぁ、でも、お互い、無事で良かった」

「そうだな」

ギーゼフがミリカを見て

「ミリカも、無事だったんだな。良かった」と言った。

「どうも・・・あ・・・ありがとうございます。皆さんも、ご無事で良かったです」とミリカが答える。





「あ~、その、ミリカの事で頼みたい事があるんだけど」

「ん?そりゃ何だ?」

「この娘はおそらく、これからもしばらく、たくさんのヤツらから追われると思うんだ。だから、その間、この娘を守ってやってくれないか?」

「え!?」

「いや、無理なお願いなのは、分かってる。でも、目の前の危険に晒されてる人を見殺しにするワケにもいかないだろ!!」

「って、言われてもな~。昨日は、そりゃ、俺達の目の前で襲われてたから、〝なりゆきで仕方なく〟って感じだったけど、これからも守り続けて、しかも、もっとたくさんのヤツらと戦うとなれば、

俺達も、かなりの危険を冒す事になるし。それに、ミリカは、俺達を雇って守ってもらうほど、金があるのか?」





すると、ゼドルは、ミリカに

「ちょっと、お金出してみろ」と言った。

「うん」





ミリカは、1000円しか持っていなかった。
「おい。〝1000円〟って・・・・・・〝フェリス〟じゃないって事は、この国の金じゃねぇだろ。まぁ、それは、当然か。一体、この国だと、いくらぐらいの価値なんだ?でも、少なくとも、言うほど大金じゃねぇだろ」





すると、ゼドルは、

「いや、そうでもないよ。俺も、良く知らないけど、おそらく、

お前の言う通り、このお札自体は、ミリカの世界でも、大金じゃなかったんだと思う。でも、こんな金、見た事ないだろ?それに、

この世界の金と違って、何か、真ん中に、角度を変えると見える

不思議な絵が描いてあるから、良く出来たお札だよ。って事は、

売れば、物珍しがられもするし、相当な大金になるだろ。それに、

成功すれば、このボディーガード屋は、もっと評判が良くなるだろ?!」と言う。

「確かに!!じゃあ、やってやるか!!!」

「お~~~!!!」

「ありがとう!!!皆!!!」

ミリカも、「ありがとうございます!!!」と言う。