ここは、日本の東京・新宿。





「澤野ミリカ」という、

父親が日本人、母親がイギリス人のハーフの

中学1年生の少女がいた。





今日は、7月15日(金)。





昼休憩のチャイムが鳴る。





〝キーンコーンカーンコーン〟





「いただきま~す!」





「だから!魔法はあるんだって!!」





ミリカが友達の「園田聖子」に言った。





「はい。分かった分かった」

「もう!信じてないな~!!」

「いや、ミリカ、もう中学生よ。良い加減、

現実とフィクションの違いぐらい解らないの?」

「そういう聖子こそ、

何で〝現実世界に魔法がない〟って説明出来るの?」

「いや、だって、あんたも、小学生の頃から

理科の授業で〝物理の法則〟を教わってるでしょ?」

「そうだけど・・・でも、聖子だって、

その〝物理の法則〟が何であるのか解らないでしょ?」





「う~ん・・・・・・」

「じゃあ、〝物理の法則〟があるのは当たり前じゃないし、

〝魔法〟も、〝絶対ない〟とは言いきれないじゃない!!!」

「・・・・・・そうだけど、でも、何でそんなに魔法を信じたいの?」

「そりゃ、だって、便利だし、何より、凄く夢があるじゃん?!」





「ん~・・・確かに、夢はあるけど、

そこまで〝どうしてもあって欲しい〟とまでは思わないし、

便利かもしれないけど、私達の生活には、機械があるから、

それで充分、不自由はしないかな~?」

「・・・・・・」
そして、昼休憩が終わり、

5時間目や6時間目も終わった。





ホームルームが始まった。





「え~、夏休みまで、あと約1週間ですが、

皆さん、最後まで気を抜かないで頑張ってください。

夏休みが近いですが、

今日は、特に、これといって、言う事はありません」





〝キーンコーンカーンコーン〟





聖子がミリカに声をかけてきた。





「ねぇ、ミリカ、一緒に帰ろう」

「うん」





帰り道で・・・・・・





「ねぇ、ミリカ、もうすぐ夏休みだね」

「うん。そうだね」

「アレ?何か、楽しみじゃなさそう」

「そう?ミリカは、何かやりたい事あるの?」

「う~ん・・・ないかな~・・・」

「へ~!意外!!超ロマンチストで妄想家なミリカが!!」

「何よそれ!!(笑)」

「あ~、ごめんごめん!!(笑)」

「あ~、でも!」

「ん?」

「やりたい事はないけど、やる事はある!!」

「え?それは何?」

「大阪のおばあちゃんの家に行くの!!」

「へ~!!良いじゃん!!楽しそう!!」

「うん!!」





しばらく歩いたところで、

道が違うミリカと聖子は別れた。





「じゃあね~!バイバ~イ!!」
その後、ミリカは歩きながら独り言を言っていた。





「おばあちゃん家に行くの、楽しみだな~!!」





やがて、家に着いた。





「ただいま~!」





「お帰り~!」





ミリカの母が言った。





「もうすぐ夏休みだけど、大阪に行くの、楽しみね!!」

「そうだね!!」

「久しぶりに行くけど、おばあちゃん、元気かしら?」

「きっと、元気にしてるよ!!」

「そうね!!」





それから、ミリカは、自分の部屋に入った。





「おばあちゃん、今頃、どうしてんのかな~?

会うの、久しぶりだから、とっても楽しみだな~!!

他の色んな人達に会うのも楽しみだけど!!」





そんな事を考えていた。





やがて、夜になった。





リビングで家族揃って晩ご飯を食べる。





「いただきま~す!!」





ミリカの妹のアミも

「お姉ちゃん、大阪に行くの、凄く楽しみだね!!」と言った。

「うん!!」





ミリカの母も、

「ワクワクするわよね!!大分久しぶりだもんね!!」と言う。

アミは、

「うん!!あ~、おばあちゃん家に着いたら何しよう!!」と言う。

ミリカは、

(おばあちゃん家で何するかは考えてなかった)と思っていた。





(そういえば、おばあちゃん家で何しよっかな~?

〝いつもと違う事が出来る〟っていったら、それは、何だろう?)
次の日、7月16日(土)の事。





この日の昼、ミリカは、リビングのテレビで

「Magic Sky World」というファンタジー映画を観ていた。





「やっぱり、カッコ良いし、素敵~!!」





そう、ミリカは、

幼い頃からずっとファンタジー作品が大好きで、

魔法を信じているのも、そのためである。





「お姉ちゃん、またそれ、観てる!!」とアミが言った。





「いや、だって、面白いじゃん!!」

「確かにそうだけど、良くそれだけ何回観ても

飽きないね~!!」

「何言ってんのよ!!この映画は名作よ!!

何回観ても飽きないどころか、

観れば観るほど深いんだから!!」

「は~。お姉ちゃんって、ホントにファンタジー好きね!!」

「だって、夢があるじゃん!!」

「ん~・・・確かに夢はあるけど・・・でも、

現実とフィクションは違うんだから、良い年だし、良い加減、もう、外でよその人達に〝魔法は現実にもある〟なんて

言わないでよね!!妹として、私、恥ずかしいから!!」

「もう!!うるさいな~!!」





ミリカは、それでもまだ、〝魔法〟をずっと信じ続けていた。





夜になり、ミリカは、自分の部屋に入った後、

ファンタジー小説を読んでいた。それは、

「不思議な国と夢見る少女」という作品だった。

「う~ん!!やっぱり、この小説も好き!!」と読みながら

独り言を言っていた。





7月17日(日)も、同じように1日中ファンタジーに浸って過ごした。
7月18日(月)。この日、また学校に行った。ミリカは、

授業と授業の合間の休憩時間、また、

「不思議な国と夢見る少女」を読んでいた。





聖子とは別のクラスメイトの「本田順子」がミリカに話しかけた。

ちょうどその時、聖子は、そこにはいなかった。





「あんた、ホント、毎日、魔法にばっかり浸ってるわね!!

良い加減、もう中学生なんだから、

もう少し違う本読むとか、何か現実味のある趣味持って、

魔法から離れなさいよ!!」

「え~!?そんなの、私の自由じゃん!!それに、

何で魔法が子供っぽいのよ!?」





「だって・・・そんなの、ホントはあるワケない、

人間が勝手に描いてる妄想でしかないし、第一、ダサいじゃん!!」

「あるワケない!?じゃあ、もし、本当にあったらどうするのよ!?

それに、〝ダサい〟って何よ!?」





そう、彼女は、ミリカをいつも馬鹿にする、イヤミな生徒だった。





聖子も、ミリカの言っている〝魔法〟について信じてはいないが、

順子のように馬鹿にはしていなかった。
やがて、また下校の時刻になった。





〝キーンコーンカーンコーン〟





いつも通り、聖子がミリカに声をかける。





「ミリカ、今日も、一緒に帰ろ!!」

「うん!!」





「ねぇ、ミリカ、あんた、この前、

〝夏休みに大阪のおばあちゃん家に行く〟って言ってたわよね?」

「うん。そうだけど?」

「良いわよね~!!私、大阪には、一度も行った事ないのよね!!」





「そうなの?」

「うん。大阪って〝たこ焼き〟が美味しいところよね!!」

「そうだよ!!でも、他にも色々、名物あるよ!!

〝焼きそば〟とか〝お好み焼き〟とか〝粉もん〟だけでも色々!!」

「〝粉もん〟?何それ?」

「名前の通り、〝たこ焼き〟や〝お好み焼き〟含めて、

〝粉〟を使って作る料理の事よ!!」

「へ~!そうなんだ~!!でも、食べる事自体は、

東京でもいつでも出来るけど、いつか本場のも食べてみたいな~!」

「そっか!でも、本場の、凄く美味しいよ!!」

「へ~!そう言われると、ますます食べたくなる!!」

「ぜひ、今度、食べてみて!!」

「うん!!」

「じゃあ、ミリカ、楽しんで来てね!!」

「うん!!じゃあ、バイバイ!!」

「バイバイ!!」





そして、いつも通り、ミリカは、途中で聖子と別れ、

帰っていった。