「ただいま~」
「お帰り~」
「うん」
遊舞は、自分の部屋に入り、今日、
学校で起こった不可思議な出来事について、まだ考えていた。
「う~ん・・・にしても、今日は、1組のヤツら、
大変だったな~・・・怖かっただろうな・・・でも、
僕の身にも起こるかもしれない。先生も言ってた通り、
気をつけないとな」
そして、宿題をした。
「フ~ッ!!今日の宿題も終わった~!!
あ~、そうだ、そろそろアーチフィスの姿を戻さないと。
アーチフィスは、僕のパートナーだから、ちゃんと、
僕のそばについてるよな?」
遊舞は、ランドセルからコントローラを取り出し、
アーチフィスの〝透明〟の魔法を解く。
〝シュン〟
アーチフィスが現れた。
「やっぱり、アーチフィスは、いつも、
パートナーの僕のそばにいるんだ!!」
「はい。私は、必要のない時以外は、なるべく、
あなたのそばにいます」
「そっか!!ついててくれてありがとう!!
アーチフィスは、強いし、頭も良いから、
そばにいて、頼もしいよ!!!」
「いえいえ。コレも、私の当然の務めです。
ここに来る以前から、
あなたが私の事を良く頼ってくださっている以上、
あなたは、私のご主人様なので」
「そっか!!でも、ありがとう!!!あ~!そういえば、
アーチフィス、頭が良いからさ、
明日から、代わりに宿題やってくれない!?
そうそう!何でこんな事、早く気づかなかったんだよ!!
僕は!!!」
「ダメです。不正はいけません」
「え~!!ケチ!!僕は、ご主人様なんだろ!!!」
「それは、そうなのですが、
倫理的に良くない行動を手伝うワケにはいきません。
ただ・・・・・・」
「ん?」
「教える事は、出来ます」
「ホント!?」
「はい」
「やった~!!!やっぱ、頼もしいぜ~!!!
アーチフィス!!!」
「いえいえ」
「でもな~、今日はもう、宿題、やっちゃったし、何しよ?
あ~、そうだ!アーチフィス、昨日、観た映画、どうだった?」
「・・・・・・昨日も申しました通り、良かったですが?」
「え?ホントにそれだけ?
〝主人公の女の人が可愛い〟とか、〝綺麗〟とか、
〝お相手の男の人がカッコ良い〟とか、〝感動した〟とか、
そういうのは、ないの?」
「う~ん。私が今まで観た事がない類いの映画でしたので、
自分にとって新鮮で、1つの文化としては良かったのですが、
私は、誰かに恋をした事がないので、恋愛というモノが
良く解らないんですよ」
「そっか。そういえば、アーチフィスは、
クールで、あんまり感情を出さないキャラだったな」
「はい」
その時、遊舞は、
(そうだ。そういえば、コイツは、
現実世界にやってきてから、漫画を読ませても、
映画を観させても、〝良い〟とは言っても、
〝面白い〟とは言わなかった。何でだろ?)と思った。
その後、2人は、色々と話をした。
そして、夜になって、寝た。
「アーチフィス、おやすみ」
「はい。おやすみなさい」
遊舞は、電気を消した。
次の日、起きてから、まず、
アーチフィスの〝透明〟の魔法を解いた。
〝シュン〟
今日は、木曜日だ。
「アーチフィス、おはよう」
「おはようございます」
次の瞬間、アーチフィスのお腹が鳴った。
〝グ~ッ〟
「あ~、すいません」
「は~。アーチフィス、またお腹空いたの?ってか、
お腹空くの、早過ぎない?」
「すいません。私は、昨日も、朝食以外食べていないもので」
「そっか~。じゃあ、仕方ないね。
ごめんね!そういえば、アーチフィスに昨日、朝ご飯以外、
何も食べさせてあげてなかった!!アーチフィスも、
ゲームキャラとはいえ、この世界の人と同じように、
〝食べる〟っていう大事な事をすっかり忘れちゃってたよ!!!
ホントごめん!!!ってか、それで昨日は良く
ご飯食べなくて、大丈夫だったね!!!」
「あ~、私のしていた仕事は、とても過酷だったので、
食べられない事も多かったんです。なので、
空腹に耐える事は、以前からの習慣のようなものなので」
「そうか~。凄いな~。じゃあ、仕方ない。今日も、
朝ご飯、食べに行こっか」
「はい」
遊舞とアーチフィスは、今日もまた、リビングへ向かう。
「おはよう~。お父さ~ん、お母さ~ん」
父と母が揃って、
「おはよう遊舞。って、また!!!」と言う。
アーチフィスは、
遊舞の父と母に
「おはようございます」と言った。
「ア・・・アハハハハハ・・・・・・」と遊舞は、
ぎこちなく笑った。
「昨日だけでなく今日も!!一体何なんだ!!!」と、
遊舞の父は言った。
「いや~、ちょっとまぁ、色々あってさ・・・・・・」
すると、遊舞の母が
「まぁ、良いじゃない!!この人、ちょっと変わってるけど、
言葉遣いも、とっても丁寧だし、礼儀作法だってとっても良いし、
凄く良い人そうな気がするわ!!!」
すると、遊舞の父が
「う~ん。まぁ、仕方ないな。アーチャーだっけ?」
「アーチフィスです」
「そうか。まぁ、とにかく、座って」
「はい」
「やっぱり、朝メシは大事だ。食べていきなさい」と、
遊舞の父は言った。
「すみません、昨日も今日もお世話になってしまって」
「気にする事はない。俺も、昔、子供の頃は良く
〝情けは人のためならず〟なんて言われて、良く、
〝相手が誰であろうと、
目の前に困っている人間がいたら、
絶対にほっとくな〟って、
親父やおふくろに何度も言われてたから」
「そうなんですね」
「あぁ」
すると、遊舞の母が、また、
アーチフィスに、朝ご飯をくれた。
「いただきます」
アーチフィスは、また、
遊舞や遊舞の父や母と一緒に朝ご飯を食べた。
数十分後、食べ終わった。
食べ終わった後、遊舞の母は、アーチフィスに
「今日はアーチフィスさん、どうするの?」と聞いた。
アーチフィスは、
「私は・・・・・・」と言う。
そこで、遊舞は慌てて、
「あ~!アーチフィス、行こう!!!
行ってきま~す!!!」と言い、
慌ててアーチフィスを引っ張って、家を飛び出した。
〝バタン!!!〟
「フ~ッ!!」
「なぜ、そんなに慌てているのですか?」
「いや、だって、ずっと普通に姿が見えてる状態のままで
家の中にいられると、何か不安だし、かと言って、
突然、魔法で透明になっても、それはそれで怪しいし、
父さんも母さんも、ビックリしちゃうだろ?」
「不安・・・なぜ不安なのでしょうか?それに、
なぜ、それで驚くのでしょうか?」
アーチフィスは、この世界では
〝他の人は皆、魔法が使えない〟という事も、
そんな〝魔法が使える自分〟がこの世界では
異質である事も、
まだ知らないようだった。
(はぁ・・・アーチフィスって頭良いのに、
〝現実とゲームの違い〟だけは、
まだ理解してないんだな~)
そして、今日もまた、一緒に、歩いて学校へ向かった。
「遊舞さん、今日も、透明になって、あなたのそばにいます」
「ありがとう。じゃあ、頼んだよ」
「はい」
遊舞は、また、アーチフィスを透明にした。
〝シュン〟
遊舞は、また学校に入って、授業を受けた。
その日の6時間目の授業は、
「理科」だった。
遊舞はその時、
(あ~、この教科、成績優秀な泳が特に得意なヤツだ!!でも、
昨日、泳はあんな事、言ってたけど、言ってた事、何が何だか
さっぱり解んなかったな~)と思っていた。
やがて、授業が終わり・・・・・・
「〝起立〟〝礼〟〝着席〟」
〝キーンコーンカーンコーン〟
その日もまた、泳、奏、演人と一緒に帰った。
すると、奏が
「今日は、何もなかったね~。良かった良かった!!」と言った。
遊舞も、
「うん!!本当に良かったよ!!!」と言った。
すると、演人は、
「しかし、昨日のアレは、何だったんだろうね~」と言った。
遊舞は、
「さぁ?でも、今日はホント、
何もなくて良かったな~!!!」と言う。
奏と演人は、
「そうだね」と答えた。
泳は、
「そうだね。でも、昨日の事、どういう事だったのか、
本当に気になるね」と言った。
遊舞は、
「うん。それに、先生も言ってた通り、
また、いつ起こるか分からないから、
気をつけないといけないね」と答えた。
奏と演人と泳は、
「うん。気をつけよう」と言った。
数十分歩いたところで、
また皆、バラバラになり、遊舞はまた1人になった。
遊舞も、
(そうだよな~。気をつけないとな~)と思っていた。
「ただいま~」
「おかえり~」
家に帰った後、また、いつものように
自分の部屋へ行った。
「良し、アーチフィスの透明を解くか」
〝シュン〟
「アーチフィス、昨日、言ってくれた通り、
ちょっと宿題、手伝って~」
「かしこまりました」
「算数の問題のここなんだけどさ、
これ、一体、どうやって解けば良いの?」
「あ~、コレですか。ここはこうして」
「なるほど~!説明が解りやすい!!
さっすがアーチフィス!!!」
〝カキカキカキカキ〟
「ここは、どう解くの?」
「こうです」
「なるほど~!!ホント助かる~!!!」
いつもなら30分ほどかかる算数の宿題が、
アーチフィスが教えてくれると、
10分で終わってしまった。
「わ~!!あっという間に終わっちゃった~!!!
ホント、ありがとう!!!アーチフィス!!!」
「いえいえ。これくらい、何でもありません」
「いや~、でも、アーチフィスって、
ホントに凄いな~!!カッコ良いし、頭良いし、
ホント、僕なんかとは大違いだよ!!!」
「いえ、遊舞さんも、努力すれば、
これくらい出来るようになりますよ」
「そうかな~?」
「はい。きっと」
「ありがとう。でも、きっと、アーチフィスには敵わないよ」
「ありがとうございます。ですが、遊舞さんも、
まだ、自分で自分の才能や魅力に気がついていないだけなのでは?」
「え~?そう?僕の才能や魅力って何だろう?
僕は、特別、頭が良いワケでもないし、同じクラスの子達みたいに
何か得意な事があるワケでもないし、
あえて言うなら〝ゲーム〟。ってとこだけど、
〝ゲーム〟が上手いからって、別にモテるワケじゃないし、
それを〝カッコ良い〟って思ってくれる人も、少なそうだしな~」
「そうですか?世間がどう評価するかは知りませんが、
私は、無駄な特技などないと思っていますが」
「そうかな?」
「はい」
その時、遊舞は、
(今まで考えた事もなかったけど、
僕のこの特技がいつか役に立つ時が来るのかな~?)と
思っていた。
その後、漢字ドリルや国語の教科書の音読もして、
全ての宿題をした。
「ああっ!終わった~っ!!」
「お疲れ様でした」
「じゃあ、今日は何しよ。あ、そうだ!!
アーチフィス、〝音楽〟聴いてみない?」
「〝音楽〟ですか?」
「え?アーチフィス、音楽、知らないの?」
「いえ、知っていますが、遊舞さんのような年齢のお方が
音楽を聴くというのが、少し意外で・・・」
「失礼だな~!!どんな年齢でも、音楽って、楽しいんだよ!!!」
「そうなんですか」
遊舞は、アーチフィスに
CDで〝J-POP〟の色々な曲を聴かせた。
〝♪~〟
「なるほど」
「ん?どうかしたの?」
「いえ、〝音楽というのは、こういうモノもあるんだな~と
思いまして〟」
「え?アーチフィス、〝J-POP〟聴いた事ないの?」
「はい。私は、元々は、イギリスに住んでいたので」
「そっか~。まぁ、アーチフィスにとっては、
色んなモノが、まだ見慣れないモノばっかだもんな~。
でも、〝J-POP〟も、なかなか良いでしょ!?」
「はい。良いとは思います。
こういう文化もあるのだという事が良く解りました」
「え?何か、曖昧な感想だな~・・・他に何か感想ないの?」
「・・・それ以外には、ありませんね」
遊舞は、
(・・・そっか~。やっぱり、アーチフィスには、
〝面白い〟って事がどういう事か解らないんだな)と思った。
「あ、そうだ!!そういえば、アーチフィス、
今日もまだ、朝ご飯しか食べてなかったな~!!
じゃあ、何か食べようか」
「良いんですか?」
「良いよ!遠慮すんなって!!」
「ありがとうございます!!!」
遊舞は、アーチフィスと一緒に、またリビングへ行った。
〝ガラガラガラガラ〟
遊舞は、
「お父さん、お母さ~ん!晩ご飯~!!」と言う。
すると、遊舞の父と母は、
アーチフィスの姿を見て、揃って、
「あ~、遊舞~!って、おい!何で、またいるんだ!!」と言った。
すると、遊舞は、
「あ~・・・まぁ、その、色々あって・・・・・・
アハハハハハ・・・・・・」と言う。
アーチフィスは、
「どうも。こんばんは」と挨拶をする。
遊舞の父は、また
「まぁ良い。そこに座りなさい」と言った。
「ありがとうございます」
「ありがとう。父さん」
「いやいや」
遊舞とアーチフィスは、イスに座った。
遊舞の父は、遊舞とアーチフィスに聞いた。
「ところで、気になるんだが、
アーチフィスさん、とやらは、いつも、
何で突然現れるんだ?それに、どうやって?」と。
「ブ~ッ!!!」
それを聞いて、遊舞は、
思わず、食べていたご飯を吹き出した。
遊舞は、
「あ、あ~・・・それは・・・・・・」と言う。
しかし、遊舞の母が
「まぁ、もう、そんなの、どうだって良いわよ。
確かに、この頃、いつも、突然現れて、ビックリするけど、
遊舞の友達なら、悪い人じゃなさそうだし、
実際、とても良い人そうだし。第一、
こんな言葉遣いが丁寧で礼儀正しい人が悪い人だとは
思えないし」と言った。
遊舞はそこで、
「フ~ッ!!」とため息をつき、ホッとした。
そこで、遊舞は、父と母に、
「ねぇ、父さん、母さん、これからアーチフィスさ、
一緒に住んでも良いかな?」と言った。
すると、今度は、
遊舞の父がご飯を吹き出した。
「ブ~ッ!!何を言うかと思えば、今度は、何だ急に!!!」
「い、いや、まぁ、ちょっと、アーチフィス、
今、凄くお金に困ってて、アパートで生活しようと思うと、
家賃とか、食事代とか色々、大変なんだって。だから、
これからは、一緒に暮らせたら助かるんだよ」
アーチフィスは、
「私は、そのような事は・・・・・・」と言う。
するとすぐ、
遊舞は、アーチフィスの口を抑え、
父と母に、
「ダメかな~?」と聞いた。
遊舞の父と母は、
「う~ん。分かった」と答えた。
遊舞は、
「わ~!!ありがとう!!!」と言った。
アーチフィスも、
なぜ遊舞が急にそんな事を言い出したのかは、
全く分かっていなかったが、
そんな、自分を遊舞の家に住ませてくれる遊舞の父と母に、
「ありがとうございます」と言った。
そして、晩ご飯を食べ終わった。
「ごちそうさま」
「ごちそうさまでした」