「じゃあ、行ってらっしゃい」と遊舞の父と母は言う。
「うん!!行ってきます!!お父さん!!お母さん!!」
「あ、でも・・・・・その、アーチフィス君は、どうするの?」
「あ・・・あ~!!コイツも出かけたいらしいんで、
一緒に行くよ!!じゃあ!!!」と言って、
遊舞は、アーチフィスを引っ張って、
慌てて家のドアを思いっきり開けて飛び出した。
〝バタン!!!〟
遊舞の父と母は、ポカンとした。
遊舞の父は、
「今日の遊舞、一体どうしたんだ?」と言った。
遊舞の母も同じく、
「そうね~。どうしちゃったのかしら?」と言った。
その時、
遊舞とアーチフィスは、一緒に外で歩いていた。
遊舞はいつも、
ギリギリの時間に学校に向かうため、
登校の時は、1人である事が多い。
「は~!!さっきは、ドキドキした~!!!」
「ドキドキした・・・?なぜでしょうか?」
「何でもないよ!!さっさと行こう!!!」
「はい」
そして、学校に着いた。
(いや・・・待てよ・・・コイツを連れていっても、
学校にコイツは入れないだろうし、どうしよ・・・
さっきは慌ててたから、今日は、何も考えずに
コイツを連れてきちゃった)
「あのさ、アーチフィス」
「どうなさいましたか?」
「悪いんだけど、やっぱり、帰って、昨日みたいに、
透明になって大人しくしててくれないかな?」
「どうしてですか?」
「小学校は、特別な時以外、生徒と先生しか入っちゃいけないし、
それに、もし、入らせてくれたところで、皆、日本人で、
今日なんか、生徒と先生しかいない中で、
21歳の、顔を見た事ないイギリス人がいきなり入って来たら、
皆、ビックリしちゃうでしょ!?」
「なるほど。そういう事ですか」
「うん」
「しかし・・・・・・」
「え?」
「私の魔法で透明になれば、入っても、学校の皆さんに
気づかれないのでは?」
「え!?確かに、そりゃ、出来ない事もないけど、
いくら何でも、それはマズいよ!!!
大体、何で、そこまでして学校に来たいの!?」
「私は、日本の学校というモノに、少し興味があります。
それに、もし、学校で、あなたの身に何かあっても、
私が隣にいれば、あなたを守る事が出来ます。私は、
魔法も使えるので」
「そっか。分かった。ありがとう。でも、僕が学校にいる間や、
帰る時は、ちゃんと、大人しくしててね。あと、
守ってくれるのは凄く嬉しいけど、学校や皆の前で、
〝透明〟以外の魔法は、使っちゃダメだからね!!!」
「分かりました」
〝シュン〟
遊舞がコントローラで操作し、アーチフィスは透明になった。
おそらく、家に帰るまでの間は操作しないだろうから、
アーチフィスを透明にしたら、すぐ、
コントローラをランドセルにしまった。
ここで言っておくが、遊舞は、アーチフィスがそばにいる時は、
何かあった時、アーチフィスを操るため、
「Partnerson」のコントローラを常に持っておくようにしている。
そして、遊舞は、学校に入り、自分のクラスの教室へ向かう。
そして、教室に入った。
「良し!!」
遊舞の教室では、担任の先生がいつものように、
ホームルームをしていた。
〝キーンコーンカーンコーン〟
「〝起立〟〝礼〟〝着席〟」
ホームルームが終わると、また色々な授業が始まる。
しかし、昼休憩になると、
遊舞の隣のクラスの「6年1組」の5人の生徒達が、
担任の先生がいない事を良い事に、
1人の生徒をいじめていた。
だが、遊舞は、
その時、運動場で遊んでいたため、
その事に気づかなかった。
「アッハッハッハッ!!!お前、いっつもいっつも、
ダサいし、地味なクセして、
先生の前で良い子ぶりやがって!!!
成績優秀の優等生だからって調子に乗りやがって!!!
ムカつくんだよ~!!!」
〝ドン〟〝ガン〟〝バン〟〝バコン〟
「やめてよ~!!!痛ッ!!!痛ッ!!!」
しかし、次の瞬間、いじめっ子達は・・・・・・
〝ボコ!!!〟
「え?アレ!?何だ!?今の!?」
〝ドカ!!!〟
「いってぇ~!!!まただ!!!一体誰が!?」
〝ボコスカ!!!〟
「ハァ・・・ハァ・・・さっきから何なんだよ!!!
まるで、見えないところから、思いっきり、
何度もパンチやキックをされてるような感じだ・・・」
そして、最後は思いっきり、まとめて吹っ飛ばされた。
〝ドンガラゴッシャーン!!!〟
「な・・・!!!何なんだよ!!!一体!!!」
いじめっ子達は、ビクビクしながら震えていた。
「に・・・逃げようぜ!!!ワ~ッ!!!」
〝トットットットットットッ!!!〟
そうして、いじめっこ達は、逃げて行った。
「フ~ッ!!!」
いじめられていた男の子は、ホッとしたが、
突然のその不思議な現象に、とても驚いていた。
「は~。助かったけど、一体、今の、何だったんだろう?」
実は、これは、アーチフィスのしわざである。
アーチフィスが透明になった状態で、
いじめられっ子の男の子を守るために、
いじめっ子達を殴ったり蹴ったりして、追い払ったのだ。
しかし、おかしいといえばおかしな事だ。
アーチフィスは、現実世界にやって来てからというもの、
喋ったり、歩いたり、食べたりなどの単純な動作は1人でするが、
今のところ、それ以外の、戦闘、魔法などの動作は、
遊舞の操作なしでした事はないし、それに、さっき、
「遊舞を守る」と言ったのも、それは、あくまでも、
遊舞がゲームで良く使っていた〝相棒〟のような存在で、
「遊舞は、〝プレイヤーという名のご主人様だから
守らなければいけないと思っている〟という使命感がある」
というだけだったからである。
なので、今の、
「遊舞以外の人を守ろうとした」というのは、
少し、不可思議な行為でもあったのだ。
もちろん、
アーチフィスがそんな事をしている事は、まだ、
遊舞も知らなかったのだ。
その後、昼休憩が終わり、5時間目も6時間目も終わり、
そして、またホームルーム。
担任の先生がこんな事を語った。
「え~、今日は、皆さんに、あるお知らせがあります。
今日の昼休憩に、隣の6年1組の、男の子達が、突然、
教室で、原因不明のケガをしたそうです」
それを聞いた遊舞は、
(え~・・・?どういう事だ・・・?)と思った。
「なので、皆さんも、注意してください。対策はありませんが、
いつ、どこで、また同じ事が起こるか分からないので、
それだけは、覚えておいてください」
(おかしな事が起こったんだな~)と、遊舞は思った。
〝キーンコーンカーンコーン〟
「〝起立〟〝礼〟〝着席〟」
その後、
遊舞は、いつものように、友達達と一緒に帰った。
今日、遊舞の下校を共にするメンバーは、
「宙尾泳」「音田奏」「十装演人」である。
すると、一緒に歩いていた奏が話しかけてきた。
「さっき、先生が言ってた、
1組で起こった事、一体、何だったんだろうね」
「さぁ・・・」と遊舞が答える。
しかし、そこで、泳が
「確かに、常識では考えられない事だけど、
ありえなくもないな」と言った。
そこで、皆、
「えっ!?」と驚いた。
泳のその一言に対し、皆、
「何で、ありえるかもしれないの!?」と言った。
泳は、
「俺、宇宙飛行士になるから、科学にも興味があって
勉強してる・・・っていうか、勉強しないといけないから
解る事なんだけど、この世の全ての事って、
実は、全部、当たり前じゃないんだよ」と言う。
すると、皆、また、
「どういう事!?」と言った。
「あのね、〝宇宙って爆発から生まれた〟って説は有名だけど、
もし、本当にそうだとしても、
〝その爆発って何がどうなって起こったのか〟までは
ハッキリ詳しくは解んないし、だから、
〝無から有はありえない〟なんて常識も、
実は違って、それも、今までに、
自分や誰かが目で見た事しか信じられない人間達が
勝手に決めつけた事かもしれないでしょ?だから、この世界、
普通に考えたらありえなさそうな色んな不思議な現象も、
もしかしたら起こる可能性があるんだよ。だから、この世界には、
もしかしたら、〝魔法〟とかもあるかもしれないし、
実際に、それが使える人も、本当にいるかもしれないよ。
たとえば、昔は、誰も、〝ある〟って事さえも知らなかった
色んな科学的なエネルギーが科学者達によって発見されて、
それを使って、〝飛行機〟みたいな空を飛ぶ乗り物、
物凄い速さで走る、〝電車〟、あるいは、〝車〟、
もっといけば、ちょっとだけ昔の80年代の人達とかが、
昔だったら信じられないような、
俺達も使ってる〝スマホ〟とかがもう、当たり前のように、
俺達の生活にあるのが何よりの証拠さ!!!」と、泳は語る。
それを聞いた皆は、
「ちょっと、話が難し過ぎて、どういう事が解んない」と言った。
泳は、
「あ~、ごめん!!ごめん!!でも、これから、
中学校や高校でも、こんな感じの事、教えてもらうし、
そのうち、解る時が来るよ!!!」
「そっか!!でも、何か、それって、
考えたら凄くワクワクする!!!」と、遊舞以外の2人は言った。
その後もしばらく歩いて、
遊舞は、泳含め、また、他の子達と1人ずつ別れ、
最後は、また、遊舞だけが1人で歩いていた。
その時、遊舞は、その、さっきの、
泳が言った事について1人で考えていた。
「ん~。さっき、泳は、あんな難しい事言ってたけど、
良く考えてみたら、どういう事か、
解らないでもないな~。泳が言ってた機械が今、
当たり前のようにこの世界にあるのもそうなんだけど、
それだけじゃなくて、僕の大好きな〝Limitless Chance!〟から
アーチフィスが飛び出してきて、しかも、それで、
会話が出来るだけじゃなくて、現実でも操作出来て、
ゲームと同じように、魔法を使わせる事まで出来ちゃうなんて事が、今、本当に起こってるんだから」と独り事を言った。
しかし・・・・・・
「今日、1組で起こったっていうあの事は、
一体、何だったんだろう?」とも言った。
遊舞は、
「普通ならありえない現象が現実世界で起こる」という現象も、
既に、アーチフィスによって体験しているし、
また、アーチフィスによって、
現実世界で魔法を目の前で見ているので、
泳の言っていた事は、後々、冷静になって考える事で
理解出来たのだが、まだ、今日、昼休憩に遊舞の学校で起こった、
「どこからともない、良く解らない現象によって、
6年1組の生徒達がケガをした」という事件が、
まだどういう事なのか見当もつかず、その真相を知らなかった。
「ただいま~」
「お帰り~」
「うん」
遊舞は、自分の部屋に入り、今日、
学校で起こった不可思議な出来事について、まだ考えていた。
「う~ん・・・にしても、今日は、1組のヤツら、
大変だったな~・・・怖かっただろうな・・・でも、
僕の身にも起こるかもしれない。先生も言ってた通り、
気をつけないとな」
そして、宿題をした。
「フ~ッ!!今日の宿題も終わった~!!
あ~、そうだ、そろそろアーチフィスの姿を戻さないと。
アーチフィスは、僕のパートナーだから、ちゃんと、
僕のそばについてるよな?」
遊舞は、ランドセルからコントローラを取り出し、
アーチフィスの〝透明〟の魔法を解く。
〝シュン〟
アーチフィスが現れた。
「やっぱり、アーチフィスは、いつも、
パートナーの僕のそばにいるんだ!!」
「はい。私は、必要のない時以外は、なるべく、
あなたのそばにいます」
「そっか!!ついててくれてありがとう!!
アーチフィスは、強いし、頭も良いから、
そばにいて、頼もしいよ!!!」
「いえいえ。コレも、私の当然の務めです。
ここに来る以前から、
あなたが私の事を良く頼ってくださっている以上、
あなたは、私のご主人様なので」
「そっか!!でも、ありがとう!!!あ~!そういえば、
アーチフィス、頭が良いからさ、
明日から、代わりに宿題やってくれない!?
そうそう!何でこんな事、早く気づかなかったんだよ!!
僕は!!!」
「ダメです。不正はいけません」
「え~!!ケチ!!僕は、ご主人様なんだろ!!!」
「それは、そうなのですが、
倫理的に良くない行動を手伝うワケにはいきません。
ただ・・・・・・」
「ん?」
「教える事は、出来ます」
「ホント!?」
「はい」
「やった~!!!やっぱ、頼もしいぜ~!!!
アーチフィス!!!」
「いえいえ」
「でもな~、今日はもう、宿題、やっちゃったし、何しよ?
あ~、そうだ!アーチフィス、昨日、観た映画、どうだった?」
「・・・・・・昨日も申しました通り、良かったですが?」
「え?ホントにそれだけ?
〝主人公の女の人が可愛い〟とか、〝綺麗〟とか、
〝お相手の男の人がカッコ良い〟とか、〝感動した〟とか、
そういうのは、ないの?」
「う~ん。私が今まで観た事がない類いの映画でしたので、
自分にとって新鮮で、1つの文化としては良かったのですが、
私は、誰かに恋をした事がないので、恋愛というモノが
良く解らないんですよ」
「そっか。そういえば、アーチフィスは、
クールで、あんまり感情を出さないキャラだったな」
「はい」
その時、遊舞は、
(そうだ。そういえば、コイツは、
現実世界にやってきてから、漫画を読ませても、
映画を観させても、〝良い〟とは言っても、
〝面白い〟とは言わなかった。何でだろ?)と思った。
その後、2人は、色々と話をした。
そして、夜になって、寝た。
「アーチフィス、おやすみ」
「はい。おやすみなさい」
遊舞は、電気を消した。
次の日、起きてから、まず、
アーチフィスの〝透明〟の魔法を解いた。
〝シュン〟
今日は、木曜日だ。
「アーチフィス、おはよう」
「おはようございます」
次の瞬間、アーチフィスのお腹が鳴った。
〝グ~ッ〟
「あ~、すいません」
「は~。アーチフィス、またお腹空いたの?ってか、
お腹空くの、早過ぎない?」
「すいません。私は、昨日も、朝食以外食べていないもので」
「そっか~。じゃあ、仕方ないね。
ごめんね!そういえば、アーチフィスに昨日、朝ご飯以外、
何も食べさせてあげてなかった!!アーチフィスも、
ゲームキャラとはいえ、この世界の人と同じように、
〝食べる〟っていう大事な事をすっかり忘れちゃってたよ!!!
ホントごめん!!!ってか、それで昨日は良く
ご飯食べなくて、大丈夫だったね!!!」
「あ~、私のしていた仕事は、とても過酷だったので、
食べられない事も多かったんです。なので、
空腹に耐える事は、以前からの習慣のようなものなので」
「そうか~。凄いな~。じゃあ、仕方ない。今日も、
朝ご飯、食べに行こっか」
「はい」
遊舞とアーチフィスは、今日もまた、リビングへ向かう。