クリスマスが近づいて来た。ここのところ月1のペースで凜の店へ行っている。

クリスマスシーズンは店も忙しくなるので、都合を聞いておくことにした。6時前に店に電話を入れる。

「クリスマスは忙しいんだろうね?」

「そうですね、23日から25日までは夜遅くまでお客さんが来ます」

「いつならいいの?」

「25日を過ぎると空いてきますので26日が良いと思います」

「分かった。26日に行くから」

「待っています」

凜も会いたがっているのが分かって嬉しかった。年内はこれで行けるのが最後になる。

◆ ◆ ◆
26日の11時過ぎに僕は店に着いた。店には客がいなかったので、凜はすぐに店を閉めた。

「ようやく暇になったから、いい時にいらっしゃいました」

「クリスマスは混んでいた?」

「まあまあの入りです。書き入れどきですから。クリスマスはどうしてお過ごしでしたか?」

「特に予定もなく仕事が終わると家へ帰っていた。街は混んでいるし、人混みが苦手だから」

「私も人混みは苦手です。ゆっくりしていって下さい」

僕は店に人が混んでいるのが嫌で、客がいなくなるころに店に着くようにしていた。時間があると映画を観たり、一度家に帰って出直すこともあった。

それに同期の山内君とかち合うことだけは避けたかった。ただ、凜が言うには山内君は来ても11時前には帰って行くとのことだった。

すぐに部屋に上がって、いつものように二人でシャワーを浴びて、愛し合う。お互いに満ち足りて眠りにつく。

この季節、暖房を強くしているが、抱き合って眠っていると凜の身体の温もりが感じられて心地よい。

僕は凜を後ろから抱えて眠るのが好きだ。凜を自分のものにしているようで安心してぐっすり眠れる。

凜もこの寝方が二人では少し狭いこのベッドでは眠りやすいと言っている。

凜を抱いて眠る時、僕は身体の左側に寝かせる。どちら側でもよさそうなものだけど自然とそうしてしまう。

凜の話では右利きの人は右手が使いやすいように左側に、左利きの人は左手が使いやすいように右側に寝かせるそうだ。確かに僕は右利きだ。

愛し合って身体は満たされているが、こうして眠っていると心も満たされる。幸せな時間が過ぎていく。

こういうことを覚えると一人寝が寂しく感じられることが多くなった。そろそろ身を固める時が近づいているのかもしれない。

明け方、僕は必ず凜を求める。そんな僕を凜は拒んだことがない。僕にはそれがとても嬉しい。

凜はHが嫌いな方ではない。むしろ好きな方だと思う。あの仕事が務まったのはお金のためもあったはずだけど、それによるところが大きい。

僕のHの仕方を凜の身体が覚えている。その何割かは凜が教えてくれたものだ。だから凜は僕と安心してHがしていられるのかもしれない。

身体は十分に満たされている。心も満たされているが半分くらいかもしれない。

凜にそれ以上を求めてはいけないし、求めないことにしている。