あの日、彼に会えなくて流した涙は無駄な涙じゃなかった。
あの日、彼に会えたのは私たちの未来のためだった。

私たちはこれからいつでも会えるし、いつでも話せる。いつでも手を繋げるし、いつでも触れることができる。

彼と私は同じ世界にいるから。

「亮平さん、ありがとう。うちの高校に合格してくれて」

「こちらこそありがとう。合格した高校にいてくれて」

「やっぱり神様に感謝だね」

「うん、そうだね」

もしかしたら、神様はまた試練を与えるかもしれない。でも、彼がいてくれるならどんな試練でも乗り越えていけると思う。


「それともう一つ気になっているんだけど、亮平さん軽井沢では自分のことを僕と言っていたよね? 今は俺だけど、どうして?」

「ああ、大正時代の人は俺じゃなくて僕のほうがいいだろうと咄嗟に考えた結果だよ。あのあと、おばあちゃんにも僕と言ってしまって、気持ち悪いと言われた。ひどいと思わない?」

「大正時代の人だからって、そこまで考えて演じていたの? おかしくて笑える。でも、気持ち悪いはひどいね」

「ね、そうだよね」

私たちは笑った。こんなふうにいつも話をして、笑っていられたらいいな。

私は窓から、青い空を見上げた。出会った日も同じような青い空だった。


-END-