亮平さんの両親はどちらも彼を引き取りたいと言い、どちらも譲らなかった。どちらも働いていたから、経済的にはどちらも引き取れる条件を持っていた。お互いが譲らなかったため、裁判離婚になったそうだ。

決まるまで、亮平さんはおばあちゃんの家にいた。どちらに引き取られても、転校することは確実だった。三人で住んでいた家は売却する予定になっていたそうたま。

母親に引き取られた場合は東京、父親に引き取られた場合は福岡に住むことが決まった。

「福岡?」

「うん。父親は去年から単身赴任で福岡に住んでいるんだ」

「そう。お母さんに引き取られたから東京になったんだね」

最終判断になったのは離婚に至った原因。それは父親の不貞だった。たった一度の不貞だったらしいが、たった一度でも妻にとっては許しがたいことで、気持ちが離れていき、離婚となった。

「やっぱり母親のほうが気持ちも不安定だったから心配もあって、出来れば一緒にいたかった。だから、よかったよ」

「亮平さんの望む結果になったんだね。よかったね」

両親の離婚はよかったことではないが、彼はちゃんと受け止めていて、母親と暮らせてよかったと思っている。私は話しを聞くことしか出来ないけれど、話すことで彼の心が軽くなればいいなと思った。