「俺、過去から来た人ではない」

思いもよらない真実が語られる。

涙を流しながら、歩いていた私が着物姿の自分に違和感を抱いたから、咄嗟に大正時代から来たと嘘をついた。着物は大正時代のもので、彼のおじいさんの形見だそうだ。

彼がお世話になったおばあちゃんは本当のおばあちゃんで夏休みの間はそこでほとんど過ごした。本当はスマホを持っていたが、あの日は家に忘れてきていた。

「雷雨の日にこっちに来たから、あの日の朝、雷雨があってその時に元の時代に帰ったのかと思ったの」

「うん、そう思ってもらいたかったから、未央ちゃんの前に出なかったんだ。二時間も待ってくれたのに、ごめんね」

「私が二時間も待っていたのをなんで知っているの?」

「あそこの看板が微かに見えるコーヒーショップから見てた。たまに姿が見えなくなって、帰ったかなと思ったら、またあそこに戻ってきていたから、ずっと俺もそこにiいたんだ。最後まで未央ちゃんを見届けようと思ってね」

見ていたなら、出てきてくれたらよかったのに。
スマホを持っていたら、その時に連絡先を交換してくれたらいいのに。
そうしたら、また会えたのに。

でも、なにもしなくてもまた会えた。