「未央ちゃん!」

彼は三年生の女子数名に囲まれていたが、私の姿を見ると手をあげた。一斉にそこにいた三年生女子が私に振り向くから、萎縮してしまい、亮平さんの元へと行けなくなった。先輩たちの視線が怖くて、足がすくんで、動けない。

動きを止めた私を怪訝そうに見た亮平さんがこちらに来て、私の手を握る。

「行こう」

「どこに?」

「とりあえず学校は出ようか」

今日は授業なしで、始業式とホームルームだけで昼前に終わった。私たちは最寄り駅近くにあるファミレスで昼ご飯を食べるために入る。注文を済ませてから、亮平さんを直視する。

本当に亮平さんだ。
真っ直ぐ見る私に彼は笑う。

「そんな真剣な顔で見られると照れるね」

「教えて、真実を。亮平さんは明治生まれで大正時代から来たんだよね? あっちに戻れなくて、こっちで暮らすことにしたの? それって大丈夫なの?」

「ごめん、未央ちゃん。俺、嘘ついたんだ」

「嘘?」

あの日会った亮平さんは自分のことを『僕』と言っていたが、今ここにいる彼は『俺』と言う。それに嘘? 何が嘘だったのだろう。