私の目がしっかりと捉えたのは、あの日会えなかった亮平さんだった。

「ちょっと未央! あの人、亮平さんじゃない?」

「え……違う。亮平さんはここにいるはずがない。この世界の人じゃないもの……」

「は? 何言ってるのよ。もしかしたら、他人の空似かもしれないけど、確かめてきなよ。早くあそこ行って」

呆然とする私の肩を祐奈が揺さぶった。私は必死に頭の中を整理する。他人の空似だったら、納得できる。あの人が亮平さんのはずはない。

過去の世界に戻った人が、ここにいたらおかしい。

とにかく確かめようと急いで階段を降りて、玄関へ向かう。その時、ちょうどさっき見た三年生たちが校舎内に戻ろうとこちらへ向かってきた。立ち止まった私と亮平さんによく似た人の目が合う。

彼は一瞬驚いた顔をしてから、フッと微笑んだ。笑顔までよく似ている。そして、他の人と同じ方向に行かないで私に近付いてきた。

「あれ? 棚橋ー、行かないのー?」

「ごめん、先に行ってて」

彼は名前を呼ばれて、答えた。彼の名前は棚橋……?

「棚橋亮平さん?」

「うん、当たり。未央ちゃん」

他人の空似ではない。彼は正真正銘の亮平さんだ。右目の斜め下にあったホクロがある。でも、どうしてここにいるのだろう。