それから菜摘が立ち上がり、『トイレに行こうと話していたの』と言い、『そうそう』と祐奈と瑠衣も続いて立ち上がった。

トイレに行くような話ではなかったけど、三人は慌ててトイレに行ってしまった。そこで私は、聞いてはいけない話で、入ってはいけない話だったと気付いた。それとまたやってしまったという後悔……。

実は少し前から何度か似たようなことがあった。三人で話しているところに私が行くと、話題を変えたり、用事を思い出したとかで教室を出ていくことがあった。

だから、唐突に加わるのではなく、様子を見ながら入るべきと思っていた。だけど、外から入った私を受け入れてくれたというのが気の緩みになっていたようだ。

嫌われるようなことも避けられるようなこともした覚えはない。

空気が変わった時がいつだったかと考えると、浮かぶのは中間試験の結果が出た時かなとあのときの三人の顔が浮かぶ。数学が得意な菜摘が良い点が採れたと嬉しそうに話していて、祐奈と瑠衣がいいなーと羨ましそうにした。

『未央(みお)は何点だったの?』と菜摘が訊いてきた。言わない方がいいように感じてはいたけど、言わない選択は出来なく、『96点』と小さい声で答えた。

『え……』と一瞬空気が凍った。