亮平さんは生き生きしているというか、楽しそうな顔をしている。

歩くこと10分、どこからかふわっと焼きたてのパンの香りが漂ってきた。美味しそうな香りだ。きっと美味しいに違いない。

思わず鼻を動かして、どこからだろうと辺りを見回す。

「あそこのパン、美味しいんだよ」

「ああ、いい匂いはあそこからなんだ。パン屋さんだよね?」

亮平さんが立ち止まって見ている先には、一軒の白いお店があった。『ベーカリー夢時間』と軒先の食パンの形をした看板に店の名前が描かれていた。

美味しそうな香りだけでなく、店構えからしても美味しいパン屋だと思えてしまう。

ドアを開けると「いらっしゃいませ」とベージュ色のエプロンして、同じベージュ色のキャスケットを被った店員さんに出迎えられる。

店内には私たちの他に六人くらいのお客さんがいた。

亮平さんおすすめだというチーズ入りソフトフランスパンとチョコデニッシュとクルミパンを買って、イートインスペースに行く。

木の四角いテーブルに向かい合って座った。

「亮平さん、ここに来たことあるんだよね?」

「うん、まだ三回だけだけど」

この時代に来たのが二週間前だと言っていたから、二週間の間に三回も来るのはそれだけお気に入りなのだろう。