そんな映画や小説みたいな話って、本当にあるのか……。私はこういうSFっぽい話は作り話であって、本当のことだと今まで一度も信じたことがない。

だから、亮平さんのいうことが全然理解できなかったが、思い返したら彼は最初から大正時代から来たと言っていた。

私の脳が事実を事実だと判断しなくて、受け入れなかった。今でも半信半疑だ。

今年の五月に元号は新しくなったから、大正時代は、平成、昭和の前で大昔のように感じる。大昔から来たなんて、簡単に信じられない。

「信じられないんだけど」

「信じられないのが当たり前だと思うから、無理に信じなくていいよ。それより未央ちゃんはどうして軽井沢にいるの?」

「友だちとの旅行で軽井沢に来た」

「お友だちは今どちらに?」

亮平さんの問いかけは、現実離れした話から、一気に現実へと引き戻した。

私がひとりで歩いていて、泣いていた理由が思い出されて、それがまた心を痛ませる。亮平さんに痛いところはないと言ったが、心はずっと痛んでいた。

「友だちは別のところに行っているんだよね」

「どうして未央ちゃんは一緒に行かないの?」

「実は私……仲間外れにされていてね。だから、私とは一緒にいたくないだろうから、腹痛と嘘ついて、私抜きで出掛けてもらったの」

「仲間外れ? ケンカじゃなくて?」