辛くて苦しくて面倒くさい学校が終わり、放課後がやってきた。
私と紅羽はいつも通りの道を歩き、下校をする。
「あーあー、佐奈が優柔不断だったせいで、弁当を昼休みの間に食べることが出来なかったじゃない!」
紅羽はジト目で私を見てくる。
「いやいや、紅羽がとんちんかんなことを連発するからだよ!」
私は紅羽に言い返した。
「まあ、それもそうか。……ところでさ、今日ってこれから用事ある?」
唐突に紅羽が質問をしてくる。
「特にないけど、……どうして?」
すると紅羽は小さくニヤリと笑って、私の目の前に来て立ち止まり、高々と衝撃の発言をした。
「今からゲーセンに行こう! 佐奈!」
私は驚きのあまり丸くなった目で紅羽を見つめた。
私は今、紅羽と一緒にゲームセンターの中にいる。
「いやー、真面目そうな佐奈がゲーセンに行くことをOKしてくれるなんて思わなかったよ!」
もぐら叩きのゲームをしながら、紅羽が愉快そうに言う。
「断る理由が見つからなかったからね。……でも、どうして紅羽は私をゲームセンターに誘ったの?」
隣でもぐら叩きに白熱する紅羽をみながら、私は不思議に思って紅羽に聞いた。
「最近、なんだか佐奈はいつもより元気がないように見えるからね」
紅羽が私を視界の端で認めながら、重い口調で言う。
「そう? 元気がないように見える?」
「……うん、私から見たらの話だけど」
モグラを叩くペースが落ちてくる紅羽。
ペースが落ちた理由が、モグラを叩くのに疲れたからか、私の元気がないという話の内容で気分が落ち込んだからか、私には判別できなかった。
「…………」
私はなんて答えたらいいのか分からず、黙り込んでしまう。
私は友達から元気がないように見えているらしい。
今の私は特に落ち込んだり、疲れたりしているわけではないので、違うと否定しようとしたが、私はふと思う。
――普段の学校生活では、私は元気とはいえないかもしれない、と。