……実は今日、私が上の空な状態で紅羽の話をぼんやりと聞いてしまったわけも、きっとまた明日行かなければいけない学校に対して、様々な苦難(くなん)な気持ちを思ってしまったからだと思う。

……もっと楽しい話が出来ればいいのに、せっかく友達と一緒に帰っているんだから。私は本当にどうしようもない、ネガティブ人間だ。

私の学校嫌いは友達にまで迷惑をかけてしまっている。そう考えると涙が出そうだった。

なんだかどんどん悲しくなり、目の端に水が少し溜まり始める私。

外で泣きだして通行人に変な目で見られたくないという意地が働き、私は手で強く目を擦って涙がこぼれるのを阻止した。

私は色々な不の気持ちを背負いながら、重たい足取りで自宅まで歩いた。


――お気に入りの白い靴は砂と土でめちゃくちゃに汚れた。今日は体育の授業があったからだ。

靴が汚れてからは、なにをやっても上手くいかないような気がした。実際小さなことでミスを起こしてしまい、失敗続きの学校生活だった。

学校にいるというだけで結構苦しい状態なのに、さらに災難が降りかかると、目を開けて現実を直視するのも厳しいと感じてしまう。

心が壊れてしまうかもしれないという瞬間が、何度かあった。

まるで、フライパンにこびりついたおこげのような一日だと思った。

学校が終わり、今は紅羽と一緒に下校をしている。だけど気分は晴れないまま。

「今日の佐奈は、なんだかとても疲れているように見えるよ」

隣で歩いている紅羽が私の顔を覗き込み、心配そうに言う。

「そう? ……でも学校帰りは私以外の人も皆疲れてるんじゃない? 紅羽だってそうでしょ?」

「確かにそうだけどさ……、佐奈の疲れは皆の疲れとはちょっと違うような気がするんだよね」

紅羽は険しい表情で意味深なことを言う。

「どういうこと?」私は首を傾げた。

「……佐奈はさ、学校が大っ嫌いでしょ?」

「勿論! 死ぬほど嫌いだよ!」

元気よく答える私。

「即答だね。嫌な場所に毎日通い、嫌な場所で日々の生活をおくらなきゃいけないから、疲れているってこと?」

「うんっ! それが一番の原因かな」

私は何度も頷く。

「……やっぱり、里歩の疲れは少し変だよ」

紅羽の顔がさらに険しい表情になる。

「ど、どこが?」

紅羽に「変」と断言され、私も段々自分がおかしいんじゃないかと心配になり始める。