――私は涙を流しているんだ。

「紅羽、私どうしたらいいんだろう? 小学生の時の記憶は忘れていたけど、小学生の時に生まれた学校嫌いは今も継続されたままなんでしょ?」

「うん。……佐奈は、強いストレスにより一時的に小学生の時の記憶を忘れていたけど、その特に生まれたトラウマは無意識に残っていたんだと思う」

「……でもそれってどうすれば直るのかな?」

不安に思う私。目から落ちた涙が地面を濡らした。

「……心の傷だから、自分が強くなって乗り越えていくしかないよ、佐奈」

紅羽は俯いた状態で、ぼそっと言う。

「そんなのって……、残酷だよ! あんまりだよ!」

私は紅羽の両肩を掴んで、叫ぶように言った。

こんな苦しい過去を抱えて、私は生きて行けるほど強くないよ、紅羽お願い助けて。

私は身勝手にそんなことを思った。

だけど私は、そんな風に取り乱してしまうほど、戻ってしまった記憶に耐えられそうになかったのだ。

――分かっている。これが私の問題だってことは。紅羽がどうこう出来る問題ではないと分かっている。

紅羽は肩に掴みかかる私を一瞬驚いたように見た後、真剣な表情になった。

「確かにいじめは辛かったと思うし、佐奈をいじめていた犯人は絶対に許せない。――でも佐奈は学校が嫌いな理由が解明できたんだよ、原因が分からないと改善どころの話じゃないけど、小学生の時に起こったいじめが原因だと佐奈は気づくことが出来た。だから――」

「だ、だから……?」私の声はさっき叫んだせいで、ほとんど擦れ声だった。

「原因が分かった今なら、……きっと、乗り越えていけるよ、きっと立ち直れるよ。……そして学校を必要以上に嫌うこともなくなって、ちょっとは居心地のいい空間になると思うよ。だって――」

――佐奈は原因を知ることが出来たんだから。

紅羽はそういってハンカチを取り出し、私に渡してくれた。

紅羽の笑顔はとても眩しく、勇気を貰えた。

――だけど私にはどうしても、小学生の時に受けていたいじめを乗り越えられそうな気がせず、学校を好きになる自分も想像がつかなかった。
 

日曜日。私は自分の部屋に閉じこもっていた。

カーテンを閉め切っているため、どんな天気か分からない。

時計を確認していないため、今が何時なのかも分からない。昨日が土曜日だから、今日は日曜日なんだということだけは分かっていた。

なんにもしたくない日曜日だった。

気力が湧かない。

食欲がわかず、なにも食べたくない。

昨日は紅羽を家の前までお見送りした後、どうやって帰ってきたのかも、帰ってきてからなにをしたのかもあんまり覚えていない。

なんだか頭や心がなにもかも受け付けずにぼんやりとしていたからだ。