私はゆっくりと目を開ける。眩しい照明の光が目に飛び込んできた。
私は仰向け状態でベッドの上にいた。首を動かして周りを確認する。周りにある家具には見覚えがあった。
……どうやら私は、自分の部屋のベッドに横になっているようだ。
紅羽はベッドの直ぐ横に立って、私の姿を心配そうに見下ろしている。
「佐奈! よかった目が覚めた! 具合はどう?」
私の目が開いたことを確認し、紅羽は安堵の表情を見せた。
「……うん、大丈夫……」
私はいまいち状況を飲み込めないが、具合は悪くなかったので大丈夫と伝える。
「まってて、今直ぐに紅羽の親を呼ぶから!」
そう言って紅羽は部屋の扉を開け、扉を閉めずに勢いよく部屋から出て行ってしまった。紅羽のポケットからなにかが飛び出す。
紅羽は気づかないまま、行ってしまった。
「紅羽! なにかがポケットから――」私はそこまで言いかけて、やめた。
急いで部屋から飛び出していった紅羽に、声が届くはずが無いと思ったからだ。
私はわけもわからない状態で、一人部屋に残される。
私はどうしてベッドの上にいるんだろう? ベッドから起き上がり私は考える。
――ああ、そうか。紅羽が、私は小学生の時にいじめられていたんじゃないかと話した後に、私は急に具合が悪くなって、激しいめまいがして、それから――。
倒れて気を失ったんだ。
私は一体どうしちゃったんだろう? いじめという言葉にあそこまで過剰に反応するなんて。
……紅羽はただ可能性を提示しただけなのに、私は気を失ってしまった。
どうしてそこまで衝撃を受けたんだろう? 思えばなんで私は小学生の時の記憶がないんだろう?
やっぱり私は――。そう考え始めると、また具合が悪くなり始めたので、あまり考えないようにした。
私は立ち上がって、紅羽のポケットから落ちたものに近づく。
――それはクシャクシャに丸まった写真だった。私はしゃがんでその写真を拾い、広げる。
その写真は、小学生の時に教室で、クラスの班の人ととった写真のようだった。六人の人物が写真には写っている。
一番左側に小さくピースをしている私の姿が見える。
笑顔でピースをしているけど、目は笑っていなく、なにかに怯えているような目をしていた。
私はその隣にいる意地が悪そうな笑みでピースをしている男に目を移した。
――すると突然、頭に電流が流れたような衝撃を受けた。
私の頭の中で、得体の知らないなにかが暴れているような感覚がし始める。
やがて、頭の中に映像らしきものが流れ始める。それはどうやら私が小学生の時の映像らしかった。