「佐奈、苦しかったら目を瞑っていた方がいいかも。多分佐奈は、この『小学生の時の卒業アルバム』を見ている限り、体の不調が続くと思うから」

「……どういうこと?」私は混乱する。

「――とりあえず目を瞑って、安静にしていなよ! 卒業アルバムを見るのは私だけで十分だから。……私がなんとかするから、佐奈まで苦しむ必要はないよ」

そう言って紅羽はひきつった顔で無理に笑った。

なんとかする? 苦しむ? 紅羽は本当になにを言っているんだ? 

……だけど確かに、体の調子が悪いのはどうにかしたいので、私は目を瞑ってカーペットの上に横になることにした。

目を瞑ったため、辺りが黒一色に染まる。

目を瞑ったことにより、私の体の不調は結構治まったが、不安な気持ちは余計に強まる。どうして体調が悪くなるのかという謎がまだ解明されていないからだ。


――どれぐらい経った後だろうか? 私はしばらく目を瞑ってじっとしていた。

「佐奈、卒業アルバムは閉じたから、もう目を開けて大丈夫だよ!」

紅羽の優しく穏やかな声が聞こえた。

私はゆっくりと目を開ける。紅羽は見下ろすような形で私を見ていた。

「佐奈、具合はよくなった?」

紅羽は心配そうな表情で言った。

私は立ち上がって「……うん、結構よくなったよ」と答える。

「なら良かったよ、安心した!」

私の肩をポンと叩いて、紅羽は安堵の表情を見せた。

私は部屋全体を見渡す。卒業アルバムは勉強机の上にひっそりとした感じで置いてあった。

「……ねえ紅羽、さっき紅羽は私が『小学生の時の卒業アルバム』を見ていると、体の不調は続いたままだと思うと言っていたけど、あれはどういうこと?」

私は気になっていたことを紅羽に聞いた。

「……本当に知りたいの? ……今は聞かない方が良いと思うよ」

紅羽は目線を下の方にやりながら、か細い声で言う。

「知ってしまったら、まずいの?」

私は少し不安になりながら言った。

「……いつかは知ることになると思うけど、とても衝撃を受けることだと思う。ショックもうけると思う。……それでも聞きたい?」

そう言って紅羽は私の目をしっかりと見据えた。

その目はいつにもまして真剣な目をしていて、三日月のように細長くなっていた。

――私は迷う。

どんな衝撃な内容が待っているか分からないから簡単に決心がつけられない。

紅羽が言いたいのは、多分だけど私の小学生の頃が関わってくることだと思う。

その小学生の頃の記憶が私にはなぜかまるっきりないため、何の話をされるのか分からず、聞くのを躊躇ってしまう。

だけど、聞いてみたい気持ちもある。

……私は悩んだ。うんと悩んで判断をしようと思った。



――そして悩んだ末に結論を出した。