「ふん。僕の懐事情を心配してくれるのはありがたいけど、だいじょうぶだよ」

そう強気な発言をした僕だが、ほんとうは貯金額が残り少ないことは自分自身一番わかっていた。

「それで、他の人はどんな願いをかなえているの?」

僕は、もう一度女神様に同じ質問をした。その口調は、さっきよりもわずかに強かった。

「人によって違うけど、最近願いをかなえに来た人は、『子供が産まれてくる日まで生きたい』というのが願いだったよ」

女神様はその人のことを思い出したのか、悲しそうな顔をした。

「結婚してるのか。でも、普通に子供が産まれてくる日まで生きられるだろう。なんで、そんな願いに一万円も神社に納めるんだ?」

僕は、わずかに首をかしげた。

「末期の肺がんだったんだよ」

「えっ!」

なにげなく口にした女神様の衝撃的な言葉が、僕の頭の中を真っ白にした。

「はい………がん………」

ゆっくりと開いた口から出た僕の声は、かすれていた。

思わず左胸に手を当ててみるが、ドクンドクンと心臓の音が聞こえた。それは、人間が生きてる証。