「で、今度はなにを願うの?」

女神様が、ため息混じりな声で僕に言った。

「ちょっと、君と話がしたくて」

僕は、か細い声で言った。

「それだけのために、神社に一万円も納めてくれたの?」

「いや、願いは他にもある。でも、これも僕の願いのひとつ」

「私のために一万円も納めるなんて、もったいないよ」

そう言って女神様は、自嘲気味に笑った。

彼女の笑顔は自分のために一万円も払ってくれたうれしさで笑っているよりも、どこか儚げに笑っているように感じた。

夜風が、南の方角から吹いた。日中は風が吹いても暑かったけれど、夜は少し肌寒く感じた。

「で、なんの話を私とするの?」

女神様が、切れ長の目を細めて訊いた。

「僕のことが好きじゃない人も、一万円神社に納めたら、僕のことを好きになってくれるのかな?」

開いた口が、僕の願いを勝手に言った。

もしもそんな願いをかなえて一時的につぼみに好きになってもらっても、お金が尽きたときの喪失感が大きいだろう。