「また、来たの？」

「……」

僕が走ってたどり着いた場所は、〝神社〟だった。茂みの中から鈴虫の鳴き声が聞こえ、時刻は午後九時に差しかろうとしていた。

「今朝も、願いをかなえにきたよね。また、願いをかなえにきたの？」

やわらかい声で、彼女が僕に訊ねた。

「………」

「顔を上げてよ」

彼女にそう言われて、僕はゆっくりと顔を上げた。顔を上げると、いつもの僕の願いをかなえてくれている女神様の姿が目に映った。

「また、願いをかなえにきたの？今朝、願いをかなえにきたよね。確か、〝父親に会いたい〟っだよね」

眉間にしわを寄せて、女神はそう言った。

「増えたんだ」

あっさりと、僕はそう言った。

「お金、なくなるよ」

眉を八の字にして、女神様がやんわりと伝えた。

たしかにこのペースでお金を神社に納め続けると、僕のお金はなくなってしまうだろう。神社に来る前、僕はまた銀行に寄って十万円ほど下ろした。通帳の最後のページには、残高五十万と印字されていた。