「いてぇ」

頬を抑えながら、尊人が苦痛に顔をゆがめている。

今まで尊人とはケンカこそしたことはあったが、こんなに本気で殴ったことは一度もなかった。

「お前ら、なにやってんだよ?」

「願、なにやってんだよ。やめろ」

僕が尊人を殴った姿を他の生徒たちが見たのか、教室が一気にさわがしくなった。

「お前、お前………」

仰向けに倒れている尊人の体に馬乗りになって、僕は我を失ったかのように一発二発と強めに殴った。

尊人が、僕の知らないところでつぼみと楽しいデートをしていたと思うと、彼に対する憎しみの感情が肥大化する。もしも、尊人がつぼみとそれ以上のことをしていたと思うと……僕はそれ以上のことは考えたくもなかった。

「いきなりなにすんだよ?」

大声を上げて、尊人が足の裏で僕のみぞおちを蹴った。

「かは」

みぞおちに強い痛みを感じて、僕は軽く後ろに倒れた。

「やめろ、二人とも。なにしてんだ」

「とにかく、ケンカはやめろ。一旦、落ち着け」

周囲の生徒たちが僕たちのケンカの仲裁に入ってくれたが、そんな言葉は耳には届かなかった。