「遅れてすみません」

僕は教室の扉を開けて、中に入った。

僕が神社から自転車で学校に到着したのは、午前九時三十二分だった。教室の生徒たちが一斉に僕に視線を集め、一瞬だけ授業が止まった。

「なにをやっていたのですか、神宮君。早く、席に座りなさい」

「はい、わかりました」

担任の小雪先生に促され、僕は自分の席に慌てて座った。

となりの席に座っていたつぼみと一瞬視線がからんだが、彼女はすぐに黒板の方に視線を向けた。

つぼみの転校を引き伸ばしていくのと同時に、彼女と尊人の仲が深まっているように思えた。

二週間前に「休みの日に久しぶりに遊ぼう」ととつぼみに言ったが、断られた。それ以降も僕はつぼみに声をかけているが、すべて断られた。それと同時に、尊人も僕の誘いを断るようになっていた。それだけではなく、二人は帰りも一緒に帰るようになった。最近の二人の関係に疑念を抱き始め、僕嫉妬心が徐々に強くなっていた。